先日、年商2億円の卸売業を営むKさんから、こんな電話がありました。「税務調査が入って、経費の一部が認められないと言われた。何が悪かったのか全然わからない」と。
Kさんの会社は帳簿もしっかり付けていたし、領収書の保管も徹底していました。それでも、調査が終わってみれば追徴課税は120万円を超えていた——そんなケースです。
税務調査で経費を否認された場合、追徴額の平均は100万円を超えると言われています。さらに「過少申告加算税」として本税の10〜15%が上乗せされます。正しい申告をしているつもりでも、書類の整え方が不十分だと、こういう結果になってしまうことがある。
では、調査官はどこから手をつけるのか。実は最初に確認する書類はだいたい決まっています。今日は、否認されやすい経費ワースト3と、それぞれの対策をお伝えします。
1位:交際費の領収書——金額だけでは通らない
飲食の領収書を保管している経営者は多いですが、調査官が見ているのは「金額が書いてあるかどうか」だけではありません。
交際費として認めてもらうには、次の5項目の記録が必要です。
- 飲食した日付と金額
- 参加者全員の氏名と所属会社
- 参加人数
- 飲食の目的・相手先との取引関係
- 1人当たりの金額(計算根拠)
「接待費として5万円使いました」という領収書だけでは、参加者が誰で何の商談をしたのかが分からない。調査官からすれば「これはプライベートの飲み会かもしれない」となります。
1人当たり1万円以下の少額接待でも、この5項目の記載は必須です。領収書の裏にボールペンでメモするだけで構いません。手間は30秒ですが、それだけで否認リスクは大きく下がります。
接待後にまとめて書こうとすると記憶が曖昧になります。店を出る前にスマホのメモかレシートの裏に書く——この習慣を今期から徹底してください。
2位:役員報酬の議事録——「決め方」が問われる
役員報酬は、定期同額給与として毎月同額を支払っていれば損金算入できます。ただし、その金額を「適正な手続きで決定した」という証拠が必要です。
その証拠となるのが、株主総会議事録です。毎期の報酬改定時に、誰がどの金額をどう決議したかを記録したものです。
「うちは社長一人で全部決めているから、議事録なんていらないと思っていた」というケースは少なくありません。でも、一人会社であっても株主総会は法的に必要で、議事録を残しておかなければ「恣意的に金額を変えたのではないか」と疑われる余地が生まれます。
特に、役員報酬を変更した期は要注意です。改定の理由・改定時期・新旧の金額が議事録に明記されているか、今一度確認してみてください。毎年同額でも「変更なし」を確認した議事録を残しておくのが理想です。
3位:家事関連費の按分——「なんとなく」は通らない
自宅を事務所として使っている経営者の場合、家賃や水道光熱費の一部を経費に計上できます。ただし、事業用と家事用を合理的な基準で分けた「按分計算の根拠」が必要です。
「なんとなく家賃の30%を経費にしている」では、調査官には通りません。間取り図をもとに事業専用スペースの面積を計算し、全体面積との比率で按分する——そういった根拠を文書で残しておく必要があります。
電話代なら事業用と私用の通話明細を分けて保管、光熱費なら使用時間や面積で計算式を明示する。「感覚的な按分」から「根拠のある按分」に切り替えるだけで、調査官の印象はかなり変わります。間取り図と計算シートを一枚作っておけば、毎年使い回せます。
書類整備が最大の否認対策
税務調査で怖いのは、実際に経費として使ったお金が「証拠なし」として否認されることです。使ったこと自体は事実なのに、記録がないために認められない——これが現場で繰り返されている現実です。
書類整備は決して難しくありません。ただ、調査が始まってから慌てて整えようとしても間に合わないことがほとんどです。税務調査の対象期間は原則3年分(悪質な場合は7年分)なので、今整備しておけばその分だけリスクを減らせます。
「うちはまだ税務調査が来たことがない」という方こそ、来る前に準備しておくのが一番の節税です。交際費の5項目記載・役員報酬の議事録整備・按分根拠の文書化、この3点を今期中に整えておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。