先日、港区で飲食店を数店舗経営している社長から電話が入りました。「税務調査が入って、追徴税額が100万円を超えそうだ」という内容でした。

原因を聞いてみると、どれも「よくある否認パターン」に当てはまるものばかり。特別な不正をしていたわけでも、悪意があったわけでもありません。ただ、知らなかっただけです。

税務調査で否認される経費には、業種を問わず一定のパターンがあります。調査官が最初に手を伸ばす書類も、ほぼ決まっています。今回はそのワースト3をお伝えします。

1位:交際費の領収書「5項目」不備

「領収書は全部保管しています」という社長でも、内容が不十分なケースが非常に多いです。

交際費として損金算入するためには、金額と日付だけでは不十分で、以下の5項目すべてを記録しておく必要があります。

  • 年月日
  • 参加者の氏名・会社名・役職(=「関係」が判別できること)
  • 参加人数
  • 金額と店舗名
  • その他参考事項(商談・接待の目的など)

1項目でも欠けると、全額否認されるリスクがあります。「3万円の接待費が全額否認」というケースは決して珍しくありません。

特に見落とされやすいのが「参加者の氏名と関係」です。「得意先との会食」では通りません。「○○株式会社 営業部長 △△氏(既存顧客・新規案件を協議)」レベルの記録が求められます。領収書の裏に一言書くだけで済む話ですが、後日の追記はほぼ認められません。その場でメモする習慣をつけることが、最も確実な対策です。

2位:役員報酬の期中変更

「上半期の業績が好調だったので、決算直前に自分の報酬を増やした」という話を、年に何件か耳にします。気持ちはよくわかるのですが、これは高リスクな行為です。

役員報酬が損金として認められるためには「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。これは、事業年度中を通じて毎月同額を支払い続けるというルールです。

期中に金額を変更すると、変更前後の差額分が損金不算入になります。仮に月50万円だった報酬を10月から月80万円に引き上げた場合、差額の30万円×残り6ヶ月=180万円が損金として認められません。これが複数年度にわたって指摘されると、追徴額は一気に膨らみます。

役員報酬を変更できるのは、事業年度開始から3ヶ月以内です。定時株主総会の決議と合わせて金額を固定するのが実務の鉄則です。期末に業績を見てから調整したい気持ちはよくわかりますが、そのタイミングでは手遅れです。来期の計画を立てる際に、あらかじめ役員報酬の金額設計を済ませておくことをおすすめします。

3位:プライベート混同経費

「自家用車の費用をすべて会社の経費にしている」「配偶者に給与を払っているが、実際にはほとんど働いていない」——調査官が特に目を光らせるのが、このパターンです。

自家用車については、プライベートでも使用している車の費用を100%損金算入していると、事業使用割合の按分を求められます。走行距離の記録や目的地のメモがなければ、「事業使用は5割以下」と判断されることもあります。

家族への給与も同様です。実態のない給与は「役員賞与」または「仮装経理」として否認されます。業務日報・成果物・タイムカードに相当する記録がなければ、「実際に働いていた」と主張しても通りません。給与を支払うなら、業務実態の記録を同時に整備することがセットで必要です。

5年遡及+加算税10%のダブルパンチ

この3つに共通して恐ろしいのが、調査の遡及期間です。税務調査は原則として過去5年分が対象になります。仮に1年あたり50万円の否認でも、5年で250万円。そこに過少申告加算税(原則10%)が上乗せされます。

「今年だけの問題」と思っていた経費処理が、気づいたら数百万円の追徴になっていた——これが税務調査の現実です。


今期の決算が近い方は、この3点を今すぐ確認することをおすすめします。交際費の領収書整備は、今日からでも始められます。何か気になる点があれば、決算が締まる前に顧問税理士へ一言相談してみてください。調査が入ってからでは、できることが格段に減ります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。