先日、顧問先の社長からこんな連絡が入りました。「3年前にやっていた節税が、今になって税務署から否認されそうなんですが…」。年商3億の建設業の社長で、当時は顧問税理士も「大丈夫」と太鼓判を押していた処理です。それでも税務調査で指摘が来た。

なぜこんなことが起きるのか。答えはシンプルで、税務調査は申告から2〜5年後にやってくることが多いからです。今は「問題ない」と思っている節税でも、数年後に証拠不足や処理ミスを突かれて、追徴課税を受けるリスクが潜んでいます。

今回は、調査で実際に問題になりやすいポイントを3つ、具体的にお伝えします。心当たりがある方は、今すぐ確認することをおすすめします。

交際費は「5項目」がセットでないと経費にならない

交際費の経費計上は、記録ルールが意外と厳格です。「日時・参加者・人数・金額・お店の名前」という5つの情報が揃っていないと、税務調査で損金として認めてもらえないケースがあります。

領収書やレシートがあれば大丈夫、と思っている方が多いのですが、それだけでは足りません。「誰と、何のために食事をしたのか」というビジネス目的を証明できないと、交際費そのものが否認されてしまいます。

よくある失敗が「参加者の名前を書き忘れていた」「接待の目的が不明瞭だった」というケースです。1件あたりは数千円でも、年間で積み上がれば数十万円になります。経費精算のフォームに5項目の記入欄が揃っているか、一度見直してみてください。

法人保険の処理ミスは、重加算税35%のリスクがある

節税目的で法人保険に入っている会社は多いですが、2019年の税制改正以降、経費処理のルールが大きく変わっています。ここで間違えると、ただの修正申告では済まないケースがあります。

特に注意が必要なのが「最高解約返戻率が85%を超える保険」です。このタイプは保険料を全額経費にすることができず、一定割合を資産として計上しなければなりません。これを知らずに全額損金処理していると、修正申告に加えて重加算税35%が課されるリスクがあります。

保険会社の担当者が「節税になります」と持ってきた商品を、そのまま全額経費にしている会社は少なくありません。加入している法人保険の最高解約返戻率を確認し、処理が正しいかどうか顧問税理士にチェックしてもらうことをおすすめします。

役員報酬の期中変更は、増額分が丸ごと損金不算入になる

役員報酬には、定期同額給与というルールがあります。簡単に言うと、事業年度が始まってから3か月以内に金額を決定し、その後は原則として変更してはいけない、という制度です。

「今年は業績が良かったから、期の途中で報酬を上げよう」とやってしまうと、増額した分は損金として認められません。会社のお金から払っているのに、税務上は経費と認められない、という状況が生まれます。

特に中小企業では、社長が経営判断として気軽に役員報酬を変更してしまうケースがあります。変更するなら事業年度開始から3か月以内に、株主総会または取締役会の議事録を残した上で行う必要があります。議事録なしで変更していた場合も、調査の際に問題になることがあります。

書類保存は7年間——今が整備するチャンス

ここまで挙げた3つに共通するのは、「当時は気づかなかった」という問題ではなく、今から対策が打てるという点です。

税務上の書類保存期間は原則7年間です。調査が来たとき「書類がない」「記録がない」状態では、実際に支払った経費でも否認される可能性があります。逆に言えば、今から丁寧に記録を揃えておけば、3年後・5年後の調査にも堂々と対応できます。

「うちは大丈夫」と思っていた社長が、税務調査で数百万円の追徴を受けたケースを、私はこれまで何度も見てきました。節税の効果を守るためには、節税そのものと同じくらい、記録と書類の整備が大切です。

今期の決算を迎える前に、交際費の記録ルール・法人保険の処理区分・役員報酬の変更手続きを一度総点検することをおすすめします。顧問税理士に「今の処理で問題ないか」を確認する一言を、ぜひ今日中に送ってみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。