先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。「同業の社長が『年100万近く節税してる』と言っていたんですが、うちってそんなにやれてますか?」と。

確認してみると、会社の経費計上はきちんとできていました。問題は別のところにありました。「社長個人として使える枠」が、まるごと手つかずだったんです。

今回紹介する3つの制度は、すべて「社長だから使える」ものです。会社員は対象外、もしくは使える枠が大幅に少ない。だからこそ、知っている社長と知らない社長で、毎年の手取りに大きな差がついていきます。

3位:iDeCo——「会社員のもの」と誤解されたまま放置されがち

iDeCoは「サラリーマンが老後に備えて積み立てるもの」というイメージを持っている社長が多いです。でも企業年金制度のない会社の役員なら、月2万3,000円、年27万6,000円まで掛金を拠出できます。

この掛金は全額が所得控除になります。運用中の利益も非課税、受け取るときも退職所得控除が適用されます。業界では「三重節税」と呼ばれる構造で、実効税率30%の社長なら年間8万円以上の節税効果があります。

「うちには企業年金なんてないし関係ない」と思っていた方ほど、実は加入できる可能性が高いです。確認してみる価値はあります。

2位:経営セーフティ共済——払い続けながら全額戻ってくる

中小企業倒産防止共済、通称「経営セーフティ共済」は、月最大20万円、年間最大240万円を損金に算入できる制度です。

この制度の最大の特徴は、40ヶ月以上加入して解約すると、それまでの掛金が全額戻ってくること。つまり「節税しながら積み立て、必要なタイミングで回収できる」という設計です。

特に退職金を支払う予定の年や、大きな設備投資が重なる年に解約すると、戻ってきた益金と費用が相殺されて課税を抑えられます。出口のタイミングを計画的に設計できるかどうかが、この制度を使いこなすカギです。

ただし、解約後の2年間は再加入できません。「とりあえず入っておいて気軽に解約」という使い方には向かないので、加入前に顧問税理士と出口戦略を話し合っておくのがおすすめです。

1位:小規模企業共済——「社長のiDeCo」と呼ばれる最強の制度

節税効果だけで見れば、ダントツのトップがこれです。月最大7万円、年間最大84万円が全額所得控除になります。iDeCoの約3倍の枠があります。

しかも受け取るときは退職所得扱いになるため、課税されにくい「二重優遇」の構造です。実効税率30%の社長がフルで活用すれば、それだけで年約25万円の節税になります。10年続ければ250万円の差になる計算です。

個人事業主や中小企業の役員が対象で、会社員は加入できません。まさに「社長のためだけに用意された枠」です。中小機構の窓口や提携金融機関で申し込めて、加入のハードルも高くありません。

3つ合わせると、年間どれくらいの効果になるか

iDeCo・経営セーフティ共済・小規模企業共済の3つをすべてフル活用すると、所得控除と損金の合計は年間350万円を超えます。実効税率30%で試算すると、100万円を超える節税効果です。

「節税しながら退職金原資と緊急資金を同時に積み立てる」という、攻守兼ねた設計ができるのがこの3制度の強みです。

もちろん、役員報酬の水準によっては掛金が毎月のキャッシュフローに影響することもあります。「使えるからフルで全部入る」ではなく、自社の資金繰りと照らし合わせながら設計することが大切です。

まだ1つも使っていない社長は、まず小規模企業共済だけでも今期中に始めることをおすすめします。年84万円の枠は、使わなければ毎年そのまま消えていきます。一度顧問税理士に「この3つ、今の私は使えますか?」と聞いてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。