先日、年商3億円の建設会社を経営するSさんから、こんな相談を受けました。
「毎年1000万以上、法人税を払っているんですが、何か手はないですか?」
話を聞くと、自宅は個人名義で購入し、家賃収入も個人口座に入れ、不動産絡みの税務対策は何もしていないとのこと。これは、もったいないどころの話ではありません。
今回は、知っている社長と知らない社長で、毎年の税負担が数百万〜1000万円単位で変わってくる「不動産を使った法人節税」の3つの手法をお伝えします。
手法① 役員社宅で家賃を丸ごと経費にする
一番手軽に始められるのが、この役員社宅スキームです。
仕組みはシンプルで、会社が物件を借り上げ、それを役員に又貸しします。このとき役員が会社に払う賃料は、国税庁が定める計算式で算定した「賃料相当額」だけで済みます。相場の20〜30%程度になることが多く、残りの70〜80%は全額法人の経費として落とせるのです。
例えば月20万円の賃料なら、役員負担は4〜6万円程度。差額の14〜16万円が毎月経費になり、年間で170〜190万円の節税効果が生まれます。しかも役員個人の手取りを減らさずに済むという点が、給与を増やす方法との大きな違いです。
注意点は、賃料相当額の計算を適切に行うこと。自己負担が少なすぎると、差額が役員報酬(給与)とみなされ、課税対象になります。顧問税理士に計算してもらうことを強くおすすめします。
手法② 法人名義で買えば47年間、課税所得を圧縮し続ける
不動産を法人名義で購入すると、建物部分を毎年「減価償却費」として費用計上できます。個人では得られない、法人ならではの強力な節税装置です。
RC(鉄筋コンクリート)造のマンションなら法定耐用年数は47年。例えば建物価格1億円のビルを購入した場合、毎年約213万円を経費として計上し続けられます。これが47年間続くわけですから、累計では1億円の課税所得が消えていく計算です。
木造なら22年と短いため、減価償却は早く終わりますが初期の節税効果は大きくなります。物件の構造と自社の利益状況を照らし合わせながら、どのタイミングで買うかを戦略的に考えることが重要です。
また、法人で不動産を所有すると、将来の事業承継や相続においても活用の幅が広がります。単なる節税だけでなく、長期的な資産戦略として捉えている社長ほど、この手法を積極的に使っています。
手法③ 管理会社を設立して所得を分散する
個人で不動産を持ち、家賃収入を得ている社長に有効なのがこの手法です。
個人の所得税は最高55%(住民税込み)の累進課税。一方、法人の実効税率は規模にもよりますが約22〜34%程度です。家賃収入が個人に集中していると、この差額が丸ごと税金として持っていかれます。
不動産管理会社(資産管理会社)を設立して法人に家賃収入を移すと、低い税率で課税されるため、同じ収入でも手元に残るお金が変わります。さらに、法人に積み上がった資金を役員報酬や退職金として活用すれば、さらに税負担を平準化することもできます。
ただし、管理実態のない「名義だけの管理会社」は税務調査で否認されるリスクがあります。実際の管理業務(入居者対応、修繕管理など)を法人が担う体制を整えることが前提です。
3つの手法を組み合わせると、状況によっては年間1000万円規模の課税所得圧縮も現実的な数字になります。
「うちはそんな大きな不動産を持っていない」という方も、まず役員社宅から始めるだけで、年間100〜200万円の節税効果を出している社長はたくさんいます。
決算が近づいてから慌てて動いても、不動産絡みの対策は準備に時間がかかります。少なくとも決算の半年前には顧問税理士と具体的なシミュレーションをしておくことを、強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。