先日、飲食チェーンを経営している社長から「決算まであと1か月なんですが、今から何か打てる手はありますか?」と連絡が来ました。
今期は出店が順調で利益が想定以上に伸びた一方、節税の準備はほとんど手つかず。「去年より税金がかなり増えそうで……」と、声に少し焦りが混じっていました。
こういう相談、毎年3月になると一気に増えます。3月決算の会社にとって、今月は文字どおり「最後の節税チャンス」。動くかどうかで、数十万〜100万円単位の差がつくことは珍しくありません。
今回は、期末直前でも確実に使える節税手段を3つ、具体的な金額とともにお伝えします。
30万円未満の備品は「今月中」に買い揃える
中小企業には「少額減価償却の特例」という制度があります。30万円未満の備品やパソコンを購入した場合、通常は数年に分けて経費化するところを、購入した期に全額一括で経費に落とせるというものです。
たとえば、そろそろ替え時だと思っていたノートPCが1台25万円なら、それがそのまま25万円の経費になります。実効税率30%で計算すると、約7.5万円の節税効果です。
重要なのは「必要だから買う」という判断が前提ということ。「来期に買う予定だったものを前倒しにする」という発想で動くのが正しい使い方です。備品の買い替え・追加を検討しているものがあれば、3月31日までに購入するかどうかを確認してみてください。
100万円分まとめて購入できれば、それだけで約30万円の節税になります。購入日が今期中であることが条件なので、検討しているなら早めに動きましょう。
保険料・顧問料は「年払い」に切り替えるだけ
「備品を追加購入するほどの余地がない」という方には、支払いのタイミングをコントロールする方法があります。
来年払う予定の保険料や顧問料を今月まとめて「年払い」で支払うと、今期の経費として計上できる「短期前払費用」というルールです。新しく何かを買う必要がなく、来期に払うはずのお金を前倒しするだけという手軽さが魅力です。
たとえば、月10万円の顧問料を毎月支払っているなら、翌年度分の120万円を今月一括で払い込む。これが正規の会計処理として今期の経費に落とせます。実効税率30%なら約36万円の節税効果です。
ただし、この処理には「継続適用」という条件があります。今期だけ年払いにして来期は月払いに戻す、という使い方は認められません。継続できる範囲かどうかを顧問税理士と確認したうえで活用してください。
経営セーフティ共済の「前納」は今週動く
3つの中でもっとも節税インパクトが大きいのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の前納制度です。
通常の掛金は月最大20万円・年240万円まで全額経費化できます。さらに前納制度を活用すれば翌年度分まで先払いできるため、最大で480万円近くをまとめて今期の経費にすることも可能です。
実効税率30%で年240万円を前納すると、約72万円の節税。かなりのインパクトです。しかも掛金は一定期間後に解約すれば戻ってくるため、「損をしながら節税する」わけではなく、手元のキャッシュを活かしながら節税できる合理的な仕組みです。
注意点はひとつだけ。今月中に申し込まないと今期の節税には間に合いません。申し込みは金融機関経由で、手続きに数日かかることもあります。「今月やろう」と思っているなら、今週中に動くことを強くおすすめします。
「動く」か「動かない」か、それだけの話
3つをまとめると、少額備品の購入・短期前払費用の活用・経営セーフティ共済の前納、どれも3月決算の今月でなければ使えない手段です。
「来期でもいいか」と先送りした瞬間に、節税の機会は消えます。利益が出ているのに何もしないまま期末を迎えた、という話は毎年必ずあります。
まず今期の着地利益を大まかに把握して、手を打てる余地がないか顧問税理士に確認してみてください。3月なら、今から動いても決して遅くありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。