先日、年収3,000万円ほどの会社を経営している社長から、こんな相談を受けました。
「妻は経理と会社の電話対応をしてくれているんですが、報酬は払っていないんです。何か節税になりますか?」
これ、実は非常にもったいない状態です。ちゃんと役員に登記して報酬を払えば、それだけで年間50万円以上の節税になるケースがあるからです。
累進課税という「格差」を逆手に取る
日本の所得税は累進課税です。所得が上がるにつれて税率が高くなる仕組みですね。年収3,000万円の社長であれば、所得税・住民税を合わせた実効税率は50%前後になります。つまり100万円稼いでも、手元に残るのは50万円程度という世界です。
一方、仮に奥様の収入がゼロであれば、少し所得を受け取っても税率は低いまま。年収240万円程度なら所得税・住民税を合わせた実効税率は15〜20%程度に収まります。
この税率の「格差」を使わない手はありません。
試算すると、差額が驚くほど大きい
具体的な数字で見てみましょう。社長が自分の報酬として3,000万円を受け取る場合と、240万円を奥様の役員報酬として切り出す場合を比べます。
社長の実効税率は約50%ですから、240万円に対しては約120万円の税負担がかかります。一方、奥様が240万円を受け取る場合、給与所得控除(約80万円)が適用されてから税率15〜20%がかかるため、税負担は30〜40万円程度。
この差額が、そのまま節税額になります。年間で60〜70万円の節税効果が期待できるわけです。「年50万円節税」というのは、むしろ控えめな見積もりかもしれません。
絶対に外してはいけない2つの要件
ここで大事なのが、「ちゃんとルールを守る」ことです。税務署もこの手法は知っていますから、形だけ役員にして実態がなければ即否認されます。
まず確認すべき要件は2点です。
1つ目は、実際に業務に従事していること。 経理・電話対応・取引先との連絡・書類管理など、会社の業務を実際に行っている必要があります。専業主婦として家にいるだけで名前だけ役員、というのは論外です。業務内容を記録しておくと、税務調査の際に説明しやすくなります。
2つ目は、定期同額給与として設定すること。 役員報酬は、事業年度の開始から3ヶ月以内に決定し、毎月同額を支払い続けることが原則です。途中で金額をコロコロ変えたり、ボーナス的に臨時で出したりすると、その分が損金として認められません。
登記と手続きの流れ
実際に進める場合の手順はシンプルです。まず株主総会で奥様を役員(取締役など)に選任する決議をして、議事録を作成します。そして同じ総会で役員報酬の金額を決議します。その後、法務局で役員変更の登記を行えば完了です。
法務局への登記費用は1万円程度、司法書士に依頼しても3〜5万円ほどです。初年度の節税額と比べれば、すぐに元が取れる投資です。
なお、奥様に役員報酬を払うと、社会保険の加入が必要になる場合があります。報酬額によっては社保の負担が増えますので、手取りベースでの試算は税理士や社労士と一緒に行うことをおすすめします。
「奥様が働いている」なら、今すぐ見直しを
この節税策は、難しい知識も特殊なスキームも必要ありません。実態のある業務があって、適正な手続きを踏む、ただそれだけです。
それなのに「なんとなく給料は払っていない」「手間がかかりそう」と後回しにしている社長が、驚くほど多くいます。年50万円以上の節税が毎年続くと考えれば、10年で500万円以上の差になります。
もし奥様が実際に会社の仕事を手伝っているのであれば、今期の役員報酬改定のタイミングで必ず検討してみてください。変更できるのは決算月から3ヶ月以内です。タイミングを逃すと1年待ちになるので、早めに税理士に相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。