先日、付き合いの長い建設会社の社長から、こんなLINEが届きました。
「税理士から『交際費はもう枠がいっぱいですよ』って言われたんだけど、まだ6月なのに……」
それを聞いて、私はすぐに思いました。「あ、まだ新ルールを知らないんだ」と。
2024年4月から変わった「飲食費ルール」
実は、2024年4月1日以降に始まる事業年度から、飲食代の経費化ルールが大きく変わっています。
改正前は、接待飲食費を全額損金にするためには交際費の枠(中小企業なら年800万円まで)を使うしかありませんでした。その枠を超えた分は経費として認められなかったのです。
ところが改正後は、1人あたりの飲食代が1万円以下であれば、交際費の枠を一切使わずに100%損金算入できるようになりました。以前の上限は1人あたり5,000円でしたが、それが倍の1万円に引き上げられています。
たったそれだけの話ですが、実務への影響は相当大きいのです。
年50万円なら15万円の節税に
「1万円以下って、結局どれくらい節税になるの?」と思う方のために、少し具体的に考えてみましょう。
仮に、1人あたり1万円以下の飲食を年間を通じて合計50万円使ったとします。実効税率30%の会社であれば、50万円 × 30% = 約15万円の節税になります。
しかも、これは交際費枠を温存したまま使える節税です。枠はそっくりそのまま別の用途に回せますから、実質的な節税効果はさらに大きくなる可能性があります。
毎月の取引先との食事代、勉強会後の懇親会、採用面接後の候補者との食事——こういった飲食が交際費枠なしで通るというのは、意外と大きなインパクトです。
必要なのは「5項目のメモ」だけ
では、どうすれば認められるのか。難しい手続きは何もいりません。飲食後にレシートへ少しメモするだけです。
記録しておくべき5項目はこちらです。
- 日付(レシートに印字されているのでほぼ自動的にクリア)
- 参加者の氏名・会社名・関係性(「○○株式会社 営業部 ▲▲さん」程度で十分)
- 参加人数
- 金額と店名(レシートに記載あり)
- 飲食の目的(「新規取引の商談」「採用面接後の懇談」など)
慣れれば1分もかかりません。スマートフォンのメモアプリでも、レシートへの手書きでも構いません。大切なのは「なぜこの食事をしたか」が後から説明できる状態を残しておくことです。
「知らないまま」が一番もったいない
交際費枠を使い切ってしまったという社長に話を聞くと、意外と「1人あたり6,000〜9,000円の食事」を交際費として処理しているケースが多いのです。
2024年4月以降であれば、それらは新ルールで交際費枠なしに100%経費化できていたはずです。知らなかっただけで、枠を無駄に消費してしまっていた——ということになります。
「顧問の先生が教えてくれなかった」という声もよく聞きますが、税理士も忙しい中で全クライアントに逐一通知するのは難しいものです。改正情報は自分でも取りに行く姿勢が、結果的に節税につながります。
注意点:「業務関連性」は大前提
ここまで読んで「うちも使える!」と思われた方、少しだけ確認しておきたいことがあります。
この新ルールが適用されるのは、業務上の必要性がある飲食に限られます。取引先との商談、社員との意思疎通を目的とした食事など、事業に関連するものだけです。
プライベートの家族との外食や、私的な友人との食事を経費にするのは当然アウトです。「1万円以下なら何でもOK」ではありませんので、この点は誤解なさらないようにしてください。
また、5項目のメモをしっかり残しておくことが、税務調査の際の根拠になります。レシートだけ保管して内容は何も記録していない、という状態だと、いざというときに経費として認められない可能性があります。
今期中に一度、洗い直してみてください
もし今まで「交際費枠がいっぱいになってきた」と気にしながら食事代を処理していたなら、2024年4月以降の飲食費のうち1人あたり1万円以下のものを洗い出してみてください。交際費枠を消化していたなら、処理方法を見直す余地があるかもしれません。
「新しい飲食費ルールで整理し直せますか?」と顧問税理士に一言確認するだけで、決算の数字が変わることがあります。知っているかどうかだけの差で年間15万円違うなら、今日中に確認しておく価値は十分あります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。