先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「毎月、自分の車でお客さんのところを回っているんですが、それって経費にできますか?」
答えはシンプルで、「できます。でも、やり方次第で結果が全然違います」というものです。個人の車を業務に使う場合は按分が必要で、証明も面倒。でも会社の名義で車を持てば、話が大きく変わってきます。
社用車は「コンスタントに経費を積める」節税手段
適切に活用できれば、社用車は年間を通じてコンスタントに経費を積み上げられる、非常に効率的な節税手段のひとつです。
なぜかというと、車に関連するコストがほぼすべて経費になるからです。法人名義で車を取得した場合、次のものが対象になります。
- 減価償却費(車両本体を耐用年数にわたって経費化)
- ガソリン代・高速代・駐車料金
- 自動車保険料(車両保険・対人対物)
- 車検費用・修理・メンテナンス代
これらを合計すると、普通乗用車でも年間100万円前後になるケースは珍しくありません。中型セダンを法人で持てば、減価償却だけで年40〜60万円。そこにガソリン・保険・車検を加えると、100万円はすぐ届きます。
年100万円の経費化で、手元に残るお金がどれだけ変わるか
具体的に計算してみましょう。法人の実効税率は、規模にもよりますが概ね25〜34%の範囲に収まります。
年間100万円を経費にできれば、その分だけ課税所得が減り、25万〜34万円の税額が下がります。3年積み重ねれば75万〜100万円。決して小さな額ではありません。
「そんなにうまくいくの?」と思われるかもしれませんが、業種や走行距離にもよるものの、社用車の経費率90%超は現実的な数字です。個人の趣味的な要素を除けば、ほぼ全額を業務費用として計上できる会社も少なくありません。
法人名義であることが、すべての出発点
重要なポイントを一つ確認しておきます。この節税が成立するのは、法人名義(会社名義)で車を取得している場合です。
社長個人が所有している車を「業務でも使っています」という形で経費にする方法もありますが、業務使用割合の算定が必要で、税務調査で争いになりやすい。リスクを避けるなら、最初から会社で買うのが合理的です。
新車でも中古車でも対応できます。むしろ中古車は耐用年数が短くなるため、購入初年度に大きな経費を作れるという使い方もあります。たとえば耐用年数が2年に満たない中古車なら、購入年度に全額を経費化することも可能です。
「業務専用」が崩れたら、すべての前提が崩れる
ただし、ここが一番の注意点です。
社用車の経費化は、あくまでも業務に使っていることが前提です。週末の家族旅行や子どもの送り迎えに使っているのに「全額経費」は認められません。プライベートと業務が混在している場合は、使用割合に応じた按分が必要です。
「バレなければいい」という考え方は危険です。税務調査では走行距離記録と出張・訪問の実績との整合性を確認されます。業務実態のない経費計上が発覚すれば、追徴課税と加算税が発生します。
運行記録が「守り」の要(かなめ)
実務で一番大切なのが、**運行記録(業務日報)**の整備です。
日付・出発地・目的地・走行目的・走行距離を記録したシンプルなもので十分です。スプレッドシートでも、スマートフォンのアプリでも、形式は問いません。大切なのは「毎日つける習慣」と「実態と一致していること」の2点です。
これがあるかないかで、税務調査のリスクが大きく変わります。逆にいえば、しっかり記録さえしておけば、社用車の経費化は堂々と主張できる節税策です。
法人で車を使っているのに個人名義のままにしているなら、今期の決算前に法人名義への切り替えを検討してみてください。切り替えの手順や旧車の扱いについては、税理士に相談するのが一番確実です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。