先日、顧問先の社長からこんな連絡がありました。
「決算の試算を見たら、思ったより利益が出てて……。何か手を打てませんか」
年商3億円の建設業、設立7年目の社長です。話を聞いていくと、小規模企業共済をまったく使っていないことがわかりました。「名前は聞いたことあるけど、よくわからなくて」というのがその理由でした。
この制度、知名度の割に使っている社長が本当に少ない。もったいないと思うので、今日は改めてしっかり解説しておきます。
月7万円が丸ごと所得控除になる
小規模企業共済は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する、経営者向けの積み立て制度です。会社員で言えば退職金制度にあたるもので、社長が個人として加入します。
掛金は月1,000円から70,000円まで、500円単位で設定できます。そして、この掛金の全額が所得控除になる。これが最大のポイントです。
月7万円をフルで積み立てると、年間84万円が課税所得から丸ごと差し引かれます。10年続ければ、累計840万円の控除です。
実効税率が30%の社長なら、10年間で約250万円の節税効果があります。実効税率40%なら、約336万円。毎月の積み立てが、そのまま節税に変わっていくイメージです。
解約時がまた優秀で、退職金として受け取れる
積み立てたお金は、廃業や退職のタイミングで受け取れます。ここでもう一つ税務上のメリットがあります。
受け取り方を「一括」にすると、退職所得として扱われます。退職所得には退職所得控除という大きな控除枠があり、勤続年数に応じて非課税部分が広がります。20年超なら1年あたり70万円の控除枠です。
積み立て時に所得控除を受けながら、受け取り時にも退職所得控除が使える。二段階で税負担が軽くなる設計になっています。
分割受け取りを選べば公的年金等控除の対象にもなるので、引退後の資金計画に応じて選択できます。
「元本割れするリスクは?」という疑問に答えます
よく聞かれるのが、「途中で解約したらどうなるの?」という点です。
正直に言うと、加入から20年未満に任意解約した場合は元本割れするリスクがあります。これは理解しておくべき注意点です。ただし、廃業や病気・けがなどやむを得ない理由での解約であれば、短期でも掛け捨てになることはありません。
長く経営を続ける前提で、老後の退職金代わりに積み立てる制度だと捉えておくのが正しい使い方です。「今期だけ節税したい」という目的には向いていません。
加入できるのは誰か
対象は、個人事業主または会社の役員(共同経営者も含む)です。ただし、常時使用する従業員数に条件があります。
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽除く):従業員5名以下
- 宿泊・娯楽業、製造業など:従業員20名以下
中小企業の社長であれば、ほとんどの方が該当します。まだ加入していないなら、まず資格があるかどうか確認するところから始めてください。
掛金はあとから変更できる
「月7万円はちょっと厳しい時期もある」という心配もよく聞きます。掛金は1,500円単位でいつでも増減できるので、資金繰りに応じて調整可能です。一時的に掛金を減らすこともできます。
払えない月があっても強制解約にはなりませんし、掛け止め(一時休止)という選択肢もあります。始めてみて、状況に応じて調整するくらいの気持ちで加入を検討してみてください。
今期の利益が多いと感じているなら、今すぐ動く
所得控除の効果が出るのは、掛金を払った年です。12月に加入して1か月分だけ払っても、その年の確定申告で控除が使えます。
決算前に「利益が出すぎている」と気づいた社長は、まず中小機構のサイトから資料を請求するか、取引金融機関や商工会議所に問い合わせてみてください。手続き自体はそれほど複雑ではありません。
月7万円で年84万円の控除。10年で840万円。税率によっては300万円以上の節税になる制度が、使われないまま埋もれているのはもったいないと思います。まだ未加入であれば、今期中に動いておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。