先日、顧問先の社長から「来月、税務調査が入るって連絡が来たんだけど…何か準備することある?」と電話がありました。設立6年目の建設業で、売上は年商2〜3億円ほど。「特にやましいことはしていないんだけど」と言いながらも、声には明らかな緊張感がありました。

税務調査は、悪いことをした会社だけが受けるものではありません。一定規模の法人には、3〜7年に一度のサイクルで定期的に回ってくるものです。問題は「備えができているかどうか」。それだけなのです。

準備なしで調査に臨んだ場合、不備が見つかると追加納税額の10〜15%が過少申告加算税として上乗せされます。さらに意図的な隠蔽と判断されると、**重加算税として35〜40%**という厳しいペナルティが課されます。100万円の申告漏れが見つかっただけで、最悪140万円以上を支払う事態になりかねないわけです。

では、調査が来る前に何をすべきか。今日はその3つを具体的にお伝えします。

① 書類を3年分、今すぐ確認する

まず取り組むべきは、書類の整備です。税務調査では通常、直近3年分の帳簿・領収書・契約書などが確認されます。「領収書はある」という会社でも、実際に整理してみると抜けがあったり、手書きのメモが判読できなかったりすることは珍しくありません。

特に税務署が目を光らせるのが交際費です。接待飲食費は、以下の5項目が記録されていないと経費として認められないケースがあります。

  • 飲食の年月日
  • 参加者の氏名・会社名・役職
  • 参加人数
  • 支払金額
  • 飲食店の名称と所在地

「領収書さえあればいい」と思っている社長も多いのですが、それだけでは不十分です。誰と、何の目的で飲食したのかが記録に残っていなければ、税務署から否認されるリスクがあります。経費帳でもメモアプリでもいいので、都度記録する習慣をつけておきましょう。

議事録も要確認です。役員報酬の変更や重要な経営判断を行った際の取締役会議事録は、税務調査で確認される書類のひとつです。「形式的にしか作っていない」という会社は、今からでも整備しておくことをすすめます。

② 過去の申告内容を自分でも見直す

書類の確認と並行して、過去の申告内容を振り返ることも重要です。税理士に任せっきりで「申告書を見たことがない」という社長も意外と多いのですが、調査が入ってから慌てるより、事前に概要を把握しておくだけで対応の質が大きく変わります。

特に確認してほしいのが役員報酬です。役員報酬を損金(経費)として認めてもらうには、原則として「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。つまり、毎月同じ金額を支払い続けていなければなりません。期中に金額を変更すると、変更分が損金不算入になることがあります。

「決算月の直前に役員報酬を増やした」「業績が悪いからと途中で減額した」という事例は、税務調査でよく指摘されるポイントのひとつです。心当たりがある場合は、事前に税理士と対応策を確認しておきましょう。

③ 今すぐ税理士に「調査前の相談」をする

3つ目は、税理士への事前相談です。「顧問税理士がいるから大丈夫」と思っている方も多いですが、調査通知が届いてから慌てて連絡するのでは遅い場合もあります。

通知が届いたらまず税理士に連絡し、「事前ミーティング」の時間をとることを強くすすめます。書類に抜けや不整合がないか、過去の申告で気になる点はないか、調査当日の立ち会いはどうするかを確認しておくだけで、結果は大きく違います。

まだ通知が届いていない段階でも、「そろそろうちにも来るかも」と感じているなら、一度「税務調査が来たらどう対応するか」を税理士に相談しておくのが賢明です。顧問税理士がいない方は、スポット相談ができる事務所に早めに問い合わせてみてください。


税務調査は「来てから準備する」では間に合いません。書類の整備は今日からでもできますし、申告内容の確認も数時間あれば概要はつかめます。

「うちにはまだ来ていないから大丈夫」と思っている社長こそ、今が動くタイミングです。3年後に青ざめないために、まずは書類の棚卸しから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。