先日、年商3億の建設業の社長からこんな連絡が来ました。「相続税の節税になると聞いて、父が元気なうちに不動産を買わせたんです。でも、いざ相続が始まったら、普通に相続するより税金が高くなってしまって……」。
話を詳しく聞いてみると、ミスが1つではありませんでした。実は、よくある4つの落とし穴をすべて踏んでいたのです。どれかひとつなら大きな問題にはならなかったかもしれない。でも、4つが重なると、節税のための不動産投資が完全に裏目に出てしまいます。
今日は、その4つのミスを具体的にお伝えします。
相続前3年以内の購入は、節税にならない
「相続税対策に不動産を買う」のは定番の手法です。現金をそのまま相続すると額面どおりに課税されますが、不動産に換えると「路線価評価」という仕組みで評価額が圧縮されます。一般的に時価の7〜8割程度になるため、節税効果があるとされています。
ところが、ここに大きな落とし穴があります。亡くなる前3年以内に取得した不動産は、路線価評価が使えません。時価で課税されるのです。
買った直後に相続が発生してしまうと、現金で持っていた場合とほぼ変わらない税額になってしまいます。節税目的で不動産を動かすなら、少なくとも3年以上前に手を打つ必要があります。「もう少し早く動いていれば」と後悔する前に、タイミングの計画が重要です。
個人名義で5年以内に売ると、利益の約4割が税金に消える
不動産を売ったとき、利益には「譲渡所得税」がかかります。この税率、保有期間によって大きく変わります。
5年以下(短期)の場合は39.63%、5年超(長期)になると20.315%——およそ2倍の差があります。「値上がりしたから売ろう」と思った瞬間、利益の約4割が税金に消えてしまう計算です。
法人名義で保有していれば、売却益は法人の利益として扱われ、他の経費と合わせて圧縮する余地があります。個人名義での短期売却は、税務的に最もコストが高い選択肢のひとつです。購入前に「誰の名義で持つか」を必ず検討してください。
土地と建物の按分を誤ると、毎年の経費が減り続ける
不動産を購入したとき、土地と建物の価格を適切に按分する必要があります。土地は減価償却できませんが、建物は耐用年数に応じて毎年経費として計上できるからです。
たとえば2億円の物件で、土地:建物の比率をどう設定するかによって、毎年の減価償却費が数百万円単位で変わることがあります。建物の割合を低めに設定してしまうと、せっかく買った不動産の節税効果が半減します。
按分の根拠としては固定資産税評価額を使う方法が一般的ですが、適切な根拠を残しておかないと税務調査で指摘されるリスクもあります。購入時に税理士と一緒に確認しておくのがベストです。
修繕費と資本的支出を混同すると、経費に落とせない
物件を持っていると、リフォームや設備の修理が発生します。このとき「修繕費」と「資本的支出」の区別を誤ると、損金算入できずに税負担が増えます。
修繕費は原状回復のための工事費用で、その年に全額経費として計上できます。一方、資産の価値を高めたり耐用年数を延ばす工事は資本的支出となり、資産計上して減価償却が必要です。
雨漏りの補修は修繕費ですが、屋根を全面葺き替えて性能を向上させる工事は資本的支出になることがあります。この線引きは曖昧なケースも多く、税務調査でも頻繁に論点になります。1件あたり20万円未満か、3年以内に定期的に行われる小修繕であれば修繕費として扱えますが、金額が大きくなるほど根拠の整理が欠かせません。
4つが重なると、節税が「増税装置」に変わる
ひとつひとつは「知らなかった」で済む話かもしれません。ただ、4つが重なると話が変わります。相続税対策が無効化され、売却時に約4割を持っていかれ、毎年の減価償却も少なく、修繕工事も経費にならない——その結果、節税のために買った不動産が税金を増やす装置になってしまうのです。
不動産は金額が大きい分、ミスの影響も数百万〜数千万円単位になります。「不動産を買えば節税になる」という話だけを信じて動くのではなく、自分のケースでどう機能するかを事前に確認することが大切です。
不動産購入を検討しているなら、契約書にハンコを押す前に必ず税理士に相談しておいてください。1時間の相談が、数百万円の節税につながることも、逆に数百万円の損失を防ぐことも、十分にあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。