先日、工場と倉庫を合わせて4棟所有している製造業の社長から、こんな一言が出ました。

「固定資産税の通知書、毎年確認するのが怖くて……また上がってたら嫌だなと思って」

気持ちはよくわかります。でも、「見なかったことにする」のは非常にもったいない話です。もしかすると、すでに何年分も払いすぎているかもしれないからです。

課税ミスは「あり得る話」です

固定資産税は、市区町村が各建物・土地の評価額を算定し、そこに税率をかけて計算しています。

問題は、この評価に使われるデータが常に最新・正確とは限らない点です。たとえば、増改築の際に床面積が正確に更新されていなかったり、倉庫として使っている建物の用途区分が古いままになっていたりするケースがあります。

床面積が実態より50平方メートル多く登録されていれば、その分だけ評価額が高くなり、毎年余分な税を払い続けることになります。用途区分の誤りも同様で、「工場」「事務所」「倉庫」では適用される税率や軽減措置が異なるため、区分が間違っていれば年間数十万円単位の差が出ることもあります。

「市区町村がやっているんだから間違いないはず」と思う方も多いですが、全国的に課税誤りは毎年一定数確認されているのが現実です。

課税台帳を「自分で見る」権利がある

意外と知らない方が多いのですが、固定資産税の評価根拠は、所有者であれば自分で確認できます。

市区町村の役所(税務課や固定資産税担当窓口)に行き、「固定資産課税台帳の閲覧を希望します」と申し出るだけです。本人確認ができれば基本的に当日中に閲覧でき、難しい手続きは必要ありません。

台帳で確認できるのは次のような情報です。

  • 土地・建物の所在地と地番・家屋番号
  • 床面積や地積(土地面積)
  • 用途区分(居宅・事務所・工場・倉庫など)
  • 各資産の評価額と課税標準額

ここに記載されている情報を実態と照らし合わせることで、「どこかがおかしいな」という違和感に気づけることがあります。この一手間が、大きな節税の入口になります。

誤りがあれば修正申請で還付も

台帳の内容と実態が明らかに異なる場合、修正申請を行うことができます。

申請が認められれば、課税額の修正だけでなく、過去に払いすぎた分の還付を受けられることもあります。還付の遡及期間は自治体によって異なりますが、過去5年分にさかのぼれるケースもあります。仮に年間40万円の過払いが5年分確認されれば、200万円の返金になる計算です。

ただし、「誤りがある」と主張するためには根拠が必要です。登記簿謄本、設計図面、改修工事の記録など、実態を証明する資料を準備しておくことが求められます。自分だけで判断が難しい場合は、固定資産税に詳しい税理士や不動産鑑定士に相談するのが確実です。

動くべきタイミングは「第1期納付前」

固定資産税は通常、4月頃に納税通知書が届き、第1期の納付期限は5月末〜6月頃になる自治体が多いです。

この「第1期納付前」が、確認・申請を動かすうえで最もよいタイミングです。納付前なら課税内容に対して不服申立の手続きがしやすく、行政側も対応しやすいからです。納付した後でも還付申請は可能ですが、手続きが複雑になるケースがあります。

通知書が届いたら、そのまま金額だけ見て払ってしまうのではなく、「この金額の根拠は何だろう」と一度立ち止まることが重要です。

複数拠点を持つ社長ほど、金額が大きい

固定資産税の確認は、事業用不動産を1棟しか持っていない社長でも意味がありますが、工場・倉庫・事務所を複数保有している社長ほど、過払いが積み上がりやすいです。

1棟あたりの誤りが年間10万円だとしても、5棟あれば年間50万円。5年分なら250万円の差になります。「どうせ大したことないだろう」と思って確認を怠ると、その分だけ損をし続けることになります。

毎年届く通知書が「払ってください」というだけの書類に見えている方も多いですが、実はその中身を確認することが、立派な節税対策になります。今年の通知書が届いたら、まず課税台帳の閲覧から始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。