先日、製造業を営む社長からこんな連絡が来ました。「5月って、毎年税金の支払いが重なってキツいんですよね」と。
話を聞くと、自動車税と固定資産税の請求が同時期に届き、合計で50万円以上が口座から出ていくとのこと。しかも、その全額を個人のお財布から払っていたというのです。
それを聞いて、私は思わずこう聞き返しました。「その車と建物、法人名義になっていますか?」
5月は「経費にできる税金」が集中する月
自動車税と固定資産税は、毎年5月に請求が届く代表的な税目です。この2つが重なるため、社長にとっては何かと物入りな時期になりがちですよね。
でも実はこの2つは、条件さえ整えば法人の経費——正確には「租税公課(そぜいこうか)」——として全額を損金算入できます。つまり、会社のお金で払える、ということです。
「税金なのに経費になるの?」と思った方もいるかもしれません。国や地方自治体に納める税金のうち、事業に関連するものは経費として認められています。自動車税も固定資産税も、その代表例です。
法人名義なら「全額」経費になる
自動車税は、その車が法人名義であれば全額を経費にできます。固定資産税も、会社が所有する事務所・倉庫・工場などの不動産であれば同様です。
中小企業の実効税率は、所得800万円超の部分で約34%。仮に年間50万円の税金を経費に落とせれば、それだけで約17万円の節税になります。なんとなく「しょうがない出費」として払っていた税金が、こんなにも変わってくるのです。
逆に言えば、この処理をしていないと、毎年17万円を余分に納税し続けていることになります。10年で170万円です。気づかずに払い続けてきた社長が少なくないのが、正直なところです。
個人名義のままだと「按分」が必要になる
一方、個人名義のままの場合は、話が少し変わります。個人名義の車や不動産を事業に使っている場合、業務使用割合に応じた「按分(あんぶん)」が必要です。
たとえば、プライベートと業務で半々に使っている車であれば、自動車税のうち経費にできるのは50%まで。「個人名義でも事業に使っているから全額落とせる」と思い込んでいた、というケースは意外と多いので注意が必要です。
また、按分を認めてもらうためには使用実態を記録しておくことも大切です。業務日報や走行記録がないと、税務調査で按分を否認されるリスクもあります。
法人への名義変更で節税になることもある
「うちの車は個人名義です」という社長の中には、法人への名義変更を検討するだけで節税効果が生まれるケースがあります。
もちろん名義変更には移転費用や手続きコストがかかります。ただ、毎年の自動車税を全額経費にできることを考えると、数年で元が取れることも珍しくありません。
特に、複数台の車を保有していたり、事務所や倉庫を個人名義で所有していたりする場合は、一度試算してみる価値があります。「名義変更したほうが得か?」という計算は、税理士に相談すればすぐに出してもらえます。
今すぐできる3つのチェック
5月の支払いが来る前に、以下を確認しておくだけでも違います。
- 車・不動産の名義は「法人」か「個人」か——法人なら全額経費、個人なら按分が必要
- 個人名義の場合、業務使用割合を記録しているか——走行記録や業務日報があるかどうか
- 会計処理が「租税公課」になっているか——勘定科目が違うと正しく損金算入されない
難しく考えすぎなくて大丈夫です。まずは「今年の自動車税・固定資産税の領収書が、会社の経費として処理されているか」を確認するだけでも、十分なスタートになります。
5月の請求書が届いたとき、「また出ていくな」と感じている社長ほど、まだ見直せるポイントが残っている可能性があります。今期の支払いがどちらの名義で処理されているか、この機会にぜひ一度確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。