先日、ある社長からこんな相談を受けました。「うちの税理士、毎年決算書を持ってきて印鑑をもらうだけなんですよね。これって普通ですか?」
その社長の決算書を見せてもらったところ、売上高に対する当期純利益率が15%を超えていました。一見すると「優良企業じゃないか」と思われるかもしれません。でも、これはある意味「危険なサイン」なんです。
決算書を開いたらまず「純利益率」を計算する
「当期純利益 ÷ 売上高」を電卓でたたいてみてください。この数字が10%を大きく超えているなら、税理士からの節税提案が届いていない可能性があります。
なぜ「利益が多い=問題」なのか。少し説明させてください。
法人税は課税所得、ざっくり言えば利益に対してかかります。中小企業の実効税率は25〜35%程度ですが、年間1,000万円の利益があれば、法人税等だけで200万円以上が消えていきます。売上3億円で純利益が3,000万円(10%)なら、税負担は700万円超。適切な対策が取られていれば、数百万円単位で変わってくる話です。
「利益が残りすぎている」は節税の余地がある証拠
優秀な税理士であれば、利益が残りすぎる前に手を打っています。代表的な方法が役員報酬の調整です。
役員報酬は会社の経費になる一方、個人の給与所得控除も使えます。会社と個人の税負担を合計で最適化する設計ができるかどうかが、税理士の腕の見せどころです。
ほかにも、出張旅費規程の整備、社宅の活用、生命保険の見直しなど、決算前に「これをやっておきましょう」と声をかけてくれるかどうか。このひと言があるかないかで、手取りが大きく変わります。
決算前3ヶ月が「本番」、決算後は手遅れ
税務の世界では「決算を迎えたら手遅れ」という言葉があります。利益圧縮の手が打てるのは、あくまで期中か決算前の数ヶ月のうちだけです。決算書が完成した後では、ほとんどできることがありません。
逆に言えば、顧問税理士から「今期の着地はこれくらいになりそうです。こういう対策を打ちませんか?」という連絡が決算3ヶ月前に来るかどうか。これが税理士の質を最もよく表すシグナルです。何も言ってこないのは、提案する力がないか、あなたの会社に本気で向き合っていないか、どちらかです。
今すぐできる3つのチェック
直近の決算書を引っ張り出して、この3点だけ確認してください。
- 純利益率が10%を大きく超えていないか(超えている場合、節税余地あり)
- 役員報酬は毎年見直されているか(定期同額給与のルールの範囲内で)
- 決算前に税理士から具体的な提案があったか(「いくら払うか」の通知だけでは不十分)
この3点を見るだけで、今の顧問税理士があなたの会社に本当に向き合っているかどうかが浮かび上がります。
「変える」より「伝える」が先
税理士を変えることはもちろん選択肢の一つです。ただ、まずは今の税理士に「決算前に節税提案をしてほしい」と直接伝えてみてください。
意外と多いのが、「言ってくれれば対応できた」というケースです。税理士も人間ですから、クライアントが何を求めているかを常に察してくれるとは限りません。一度伝えて動かなければ、そのときが本当に見直しのタイミングです。
年間の顧問料がいくらであっても、節税できていなければ実質的に損をしています。決算書の数字は、税理士との関係を見直す最良のきっかけです。次の決算前に、ぜひ一度確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。