毎年5月になると、ポストに自動車税の通知書が届きます。
先日、ある社長からこんな話を聞きました。「ずっと個人名義のままにしてたんですよ。車の維持費、全部自腹で払ってました」。年商2億円を超える会社を経営し、毎日営業にも打ち合わせにも車を使っているのに、駐車場代も保険も車検も、すべて個人のお金で処理していたと言います。
「個人で買った車だから、経費にならないと思ってたんです」と、当たり前のように話していました。
気持ちはわかります。でも、これは正直かなりもったいない。年間の車関連費用をざっと計算すると、自動車税・保険・車検・ガソリン・駐車場を合わせて30万円前後になることも珍しくありません。法人名義に変えるだけで、その費用が丸ごと会社の経費になる可能性があるんです。
法人名義にすると、どの費用が経費になるか
車が法人名義になると、その車にかかるほぼすべての費用を会社の経費として処理できます。
- 自動車税(毎年5月)
- 任意保険・自賠責保険
- 車検・修理費用
- ガソリン代(業務利用分)
- 駐車場代(業務で使用している場合)
- 高速代・ETCカード
3000cc前後の車なら、自動車税だけで年58,000円。任意保険が年10万円前後、車検が2年に1回で10〜20万円、駐車場が月1万5千円なら年間18万円。足してみると、年30万円はあっという間に超えます。
その金額が、まるごと会社のコストになる。これが法人名義の意味です。
節税額を数字で見てみる
法人の実効税率は、会社規模や利益水準によって異なりますが、おおよそ23〜34%です。
年間30万円の車関連費用が経費になった場合、税率23%なら年間約6.9万円、税率34%なら約10.2万円の節税効果になります。「たかが年7〜10万円」と感じるかもしれませんが、5年続ければ35〜50万円。10年なら70〜100万円の差になります。
しかも、法人で新車を購入した場合は、車両本体の取得価格も固定資産として計上し、減価償却を通じて毎年の経費に反映できます。購入金額が大きいほど、節税効果は一層大きくなります。
「業務で使っているから個人名義でも経費」は通じない
よく聞く誤解が、「毎日仕事で使っているんだから、個人名義のままでも経費にできるはず」という考えです。
残念ながら、これは基本的に認められません。税務上、個人名義の車はあくまで「個人の資産」です。たとえ毎日営業に使っていても、そのまま法人の経費にすることはできず、税務調査でも厳しく見られるポイントのひとつになっています。
個人名義のまま会社と「賃貸借契約」を結んで賃料を経費化する方法もありますが、適正賃料の算定や契約書の整備が必要で、手間がかかります。全額の経費化という意味では、やはり法人名義への変更が王道です。
名義変更の流れ
個人名義の車を法人に移す方法は、大きく「売買」と「現物出資」の2つがあります。
実務でよく使われるのは売買です。個人が法人に時価で車を売る形をとります。中古車相場などをもとに適正な価格を算定し、売買契約書を作成。その後、陸運局で名義変更の手続きをします。法人の印鑑証明や車庫証明など必要書類がいくつかあるので、ディーラーや行政書士に代行してもらうとスムーズです。
手続き費用は数万円程度。1〜2年分の節税効果で十分回収できる金額です。
5月こそ、見直すベストなタイミング
自動車税の通知書が届く5月は、車の名義を確認する絶好のタイミングです。
「個人名義になっているな」と気づいたら、今期中に名義変更を進めると、翌年から維持費がすべて会社の経費になります。特に年間の車関連費用が20万円を超えているなら、手続きのコストを差し引いてもプラスになることがほとんどです。
「ずっと後回しにしてた」という方も、今年こそ動いてみてください。来年の5月に同じ通知書を見て、また自腹で払うことになる前に。まずは顧問税理士に「車の名義、確認してもらえますか?」と一言投げかけるところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。