5月になると、社長からこんな相談が増えます。「自動車税の納付書が届いたんですが、これって経費になりますよね?」というものです。

答えは「条件を満たせばなります」。ただし、その条件を一つ間違えると、税務調査でまるごと否認されてしまうケースがあります。今日はこの落とし穴を丁寧に解説します。

法人名義なら、原則として全額経費になる

まず結論から。法人名義で登録された社用車にかかる自動車税は、原則として全額損金算入できます。つまり、経費として落とせます。

排気量2,000cc未満の普通車なら年間3〜4万円程度、2,000cc超になると5万円前後の自動車税がかかります。これが丸ごと経費になるのは、積み重なると決して小さくない効果です。社用車が複数台あれば、それだけ節税額も大きくなります。

では、どんな条件を満たせばいいのでしょうか。

「業務使用の証明」が絶対条件

税務署が経費算入を認めるかどうかは、ひとつのポイントに集約されます。それが「その車が業務のために使われているかどうか」です。

当たり前に聞こえますが、ここが落とし穴なのです。

社長が通勤や取引先への訪問に使う一方で、週末の家族ドライブや休日のゴルフにも同じ車を使っているケースは非常に多い。会社のお金で買って、会社の経費で維持しているのに、実態は「社長の私用車」になっているわけです。

こうした状況で税務調査が入ると、税務署は「私用にも使われているから、その分は現物給与だ」と認定することがあります。そうなると、経費にした自動車税が否認されるだけでなく、場合によっては給与として社長個人に所得税が課される可能性まで生じます。

走行記録が、自分を守る盾になる

では、業務使用をどうやって証明するか。最も有効な手段が走行記録の作成です。

毎日、どこへ、何の目的で、何km走ったかを記録する。これだけです。Excelで十分ですし、スマホの走行管理アプリを使っている社長も増えています。

記録のポイントは3点です。

  • 日付・目的地・訪問先・走行距離を記入する
  • 業務外の走行がある場合は、その分を明確に区分する
  • 毎日継続して記録する(月末にまとめて書くのはNG)

特に3つ目が重要で、「税務調査が来てから慌てて作った記録」は信憑性がないと見なされます。日常的につけておくことが大前提です。

「うちは完全に社用のみだから記録は不要」と思っている社長もいますが、税務調査では「それを証明できますか?」と問われます。実態として100%業務利用だとしても、客観的な記録がなければ税務署には伝わりません。記録は義務ではありませんが、自分を守る最強の証拠になります。

名義と実態が乖離していると即アウト

逆の極端なケースも確認しておきます。法人名義の車でも、業務にまったく使っていなければ、自動車税はもちろん車両本体の費用も経費算入できません。

「名義だけ会社にして、実態は家族の車」というスキームは、今の税務調査でほぼ確実に問題にされます。名義と実態の乖離は、税務署が最も厳しく見るポイントのひとつだからです。

自動車税だけでなく、車両本体・任意保険・ガソリン代・車検費用など、その車に関連するすべての費用が否認対象になる可能性があります。節税のつもりが、逆に大きなリスクになる典型パターンです。

個人名義の車を会社で使っているケース

少し話が広がりますが、「個人名義の車を業務に使っている」社長も多いです。この場合は社用車とは扱いが異なり、個人から会社への賃貸借契約を結ぶか、走行距離に応じた使用料を会社が個人に支払う形が一般的です。

自動車税そのものの扱いは少し複雑になりますが、適切な契約を整えれば費用計上できる部分もあります。この辺は個別の状況によって変わりますので、担当の税理士に一度確認してみてください。

5月は走行記録を見直す絶好のタイミング

自動車税の納付書が届く今の時期は、社用車の管理ルールを見直す絶好のチャンスです。「そういえばきちんと記録をつけていなかった」と気づいた方は、今月から始めることをおすすめします。

年5万円の経費算入を確実に守るためのコストは、1日1〜2分の記録作業だけです。従業員が業務外に使っているケースも含めて、社内の管理ルールをこの機会に整備しておくと、将来の税務調査に対して盤石な備えになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。