先日、年商4億円の不動産会社を経営している社長から、こんな連絡が届きました。「税務調査が入って、接待交際費と旅費をほぼ全額否認されてしまいました。追徴が700万円を超えそうで、頭が真っ白です」と。

内訳を見せてもらうと、金額が突出して多いわけではありませんでした。問題は別のところにありました。誰と、なぜ、何のために使ったか——その記録がほとんど残っていなかったのです。

税務署が本当に確認していること

調査官が見ているのは金額だけではありません。その支出が「事業に必要だったか」を証明できるか、という一点を徹底的に掘り下げます。

たとえ3,000円の飲食費でも、「誰と・何の目的で・どういう仕事上の関係があったか」が記録されていなければ、否認対象になりえます。金額の多少は、実はあまり関係ないのです。

狙われやすい経費ワースト3

接待飲食費——領収書があっても安心できない

最も否認率が高いのが接待飲食費です。領収書があっても、参加者名と目的が記載されていなければ証拠書類として不十分と判断されます。

4人で食事をして40,000円の領収書があるとします。税務署が求めるのは「誰を招待したか(氏名・会社名)」「どんな商談が目的だったか」の2点です。これが書かれていない領収書は、いくら束になっていても説得力を持ちません。

旅費交通費——規程なしは一発アウト

出張旅費は、旅費規程がないと一気に危険度が上がります。日当の金額に合理的な根拠がなければ、給与と認定されて所得税・社会保険料の追徴が同時に来る可能性があります。

「社長の出張だから日当1日5万円」という設定を、規程なしでやっていたとしましょう。税務署から「その金額の根拠は?」と聞かれたとき、即座に答えられますか。答えられなければ、その日当はまるごと否認されます。

自宅家賃の按分——根拠なき割合は全額否認

自宅を事務所として使用している場合の家賃按分も、否認率が高い項目の一つです。面積や使用時間の根拠が曖昧なまま「6割を経費に」としていると、全額否認というケースも珍しくありません。

「業務使用分の計算根拠を見せてください」と言われたとき、間取り図や使用時間の記録をすぐに提示できるかどうかが分かれ目になります。

否認後に待っているもの

経費を否認されると、単純に法人税が増えるだけでは済みません。

過少申告加算税として本税の10〜15%が上乗せされます。さらに、意図的な隠蔽や仮装と認定された場合は**重加算税35%**が課されます。700万円の追徴税額に35%が上乗せされると、支払い総額は1,000万円近くに膨らむこともあります。それに加えて、延滞税も日割りで加算されます。調査が長引けば長引くほど、金額は増え続けます。

対策はシンプル。でも継続が難しい

解決策は実は難しいものではありません。支出のたびに「目的・相手先・金額・参加者」を記録する——これだけです。

飲食の場合は領収書の裏に手書きでも構いません。旅費については旅費規程を整備し、自宅家賃については間取り図と使用面積の根拠を1枚の資料にまとめておきましょう。「そんな細かいこと、毎回やっていられない」という気持ちはよく分かります。ただ、税務調査が来てから慌てて整備しようとしても、過去の記録は遡れません。

まだ旅費規程を作っていないなら、今期の決算前に整備しておくことを強くお勧めします。接待飲食費の記録フォーマットを社内で統一するだけでも、リスクは大きく下がります。個別の状況に応じた対策は、ぜひ顧問税理士にご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。