先日、年商2億円の不動産会社を経営する社長から、青ざめた声でこんな連絡がありました。

「税務調査が終わりました。追徴が340万円で……しかも重加算税まで乗りそうで」

話を聞くと、否認された経費は飲食費・家族への給与・社用車の維持費など、「うちもやっている」と思い当たる方が多いものばかりでした。どれも悪意があったわけではなく、ただ「記録が足りなかった」というケースです。

税務調査で経費を全額否認されると、追徴課税の平均は300万円を超えます。さらに悪意があると判断されると35%の重加算税が上乗せされ、一発で400万円超の出費になることも珍しくありません。

調査官が真っ先に目をつける経費5項目

調査官は過去3年分の帳簿を細かく精査します。その中でもっとも多く指摘されるのが、次の5項目です。

1. 記録が不完全な飲食費

接待交際費のなかで、「誰と・何のために・どんな成果があったか」が残っていないものは、税務調査の最初の標的になります。

レシートはある、でも相手先や目的が書かれていない。メモ書きはあるが手書きで読めない。こういうケースが積み重なると、全額が「私的利用の疑い」として否認されます。金額ではなく「記録の質」で判断されるのが、接待費の厳しいところです。

2. 実態のない家族への給与

配偶者や親族への給与は、法人であっても否認リスクがあります。問題になるのは「実態がない」場合です。

週に数時間しか働いていないのに月30万円の給与を払っていたり、書類上だけ役員にしていたりするケースは指摘を受けやすい。給与を払う場合は、業務内容の記録・出退勤の管理・議事録の整備が最低限必要です。「家族だから」で済ませてきた経営者ほど、調査で痛い目を見ます。

3. 私的利用が混じる車・旅行費

社用車の燃料費や高速代を全額経費にしているケース、旅行を「研修」「視察」として落としているケース。これ自体は必ずしも違法ではありませんが、「どの程度が業務利用か」の証拠がなければ全額否認される恐れがあります。

走行記録簿をつけていない、旅行先での業務内容が不明確、ひとりで行った旅行を「社員研修」にしている——こういう状況だと、調査官は容赦しません。

4. 領収書なしの支払い

「あとで精算すればいい」と現金払いで済ませた費用が、気づいたら何十万円もある——よくある話です。

領収書のない支払いは原則として経費として認められません。クレジットカードの明細だけでも不十分なケースがあり、現金取引は特に厳しく見られます。電子レシートやスマホアプリでの保存でもOKなので、「その場で記録する習慣」を組織ごと作ることが大切です。

5. 架空の会議・研修費

実際には開催していない会議の費用や、中身のない研修として交通費・宿泊費を計上しているケース。調査官はこういった費用について、参加者への個別の聞き取りを行うことがあります。

社員に確認して話が食い違った時点でアウト。架空の会議や研修は、発覚した瞬間に重加算税の対象になります。

「証拠がない」だけで全額否認になる、という現実

5項目に共通するのは、「悪いことをしようとしたわけではない」ケースも多い、ということです。

飲食費のメモを残し忘れた。家族への給与は本当に働いてもらっている。車は仕事でも使っている。でも調査官に対して「証明できない」のであれば、同じ結果になります。税務の世界は「やった・やらない」ではなく「証明できるか・できないか」で動くからです。

これを理解しているかどうかが、調査の結果を大きく左右します。

今日から始められる3つの習慣

難しい仕組みを入れなくても、明日から変えられることがあります。

  • 飲食費は必ずメモを残す:相手先と目的を、その場でスマホに入力するだけでいい
  • 家族への給与は業務記録とセット:月次で業務内容・時間・成果を簡単に記録しておく
  • 車・旅行は「何の業務か」を明文化:出張報告書や議事録を簡単なもので構わないので残す

「記録があれば守れる、記録がなければ守れない」——突き詰めるとそれだけのことです。


今の経費管理を少し振り返ってみてください。レシートはある、でも誰との食事か覚えていない。家族の給与は払っているが業務の記録は正直ゼロ。そういう状態が続いているなら、今期中に整備しておくことを強くおすすめします。税務調査は突然やってきます。準備できているかどうかが、300万円の差になります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。