先日、ある社長からこんな相談を受けました。「うちの節税、ちゃんと機能してるよね?マンションも保険も退職金も、全部ちゃんと対策してるから安心してるんだけど」

正直に言わなければなりませんでした。「その3つ、今はもう使えないものが含まれています」と。

節税は「やった時点」ではなく「使う時点」のルールで判定されます。知らないうちに法律が変わり、昔は有効だったスキームが今は通用しない、というケースが想像以上に多いのです。

タワマン節税は、2024年1月から「別物」になった

かつてタワーマンションは、節税の優等生でした。路線価による相続税評価額と実際の市場価格に大きな乖離があり、たとえば市場価格5億円のタワマンが、相続税上は1億円台で評価される、といったことが起きていました。

国税庁はこの乖離を問題視し、2024年1月から新しいルールを導入しました。市場価格との差が大きい物件については、評価額を引き上げる補正がかかる仕組みです。資産規模10億円クラスの方では、節税効果が500万円以上吹き飛ぶケースも現実に出ています。

注意したいのは、「買ったときのルールが適用される」とは限らない点です。相続税は、相続が発生した時点のルールで評価されます。購入時に節税目的でタワマンを選んだ方も、今の評価額がどうなるか、改めて専門家に確認しておく必要があります。

「もう買ってしまったから関係ない」ではなく、「今の評価額で相続税試算をやり直す」というアクションが求められているのです。

法人保険の「全額損金」は2019年に終わっていた

「保険料を全額損金にして、解約時に手元に戻ってくる」という手法が流行した時代がありました。高解約返戻率型の法人保険を活用したスキームで、節税と資産形成を同時に実現できるとして、多くの中小企業オーナーに広まりました。

しかし2019年、国税庁がこの手法を封じる通達を出しました。解約返戻率が高い保険ほど損金算入できる割合が制限され、最高解約返戻率85%超の保険は保険料の一部しか損金計上できなくなりました。初年度に全額損金を落とすスキームは、制度上、過去のものになっています。

それでも今でも「節税になりますよ」と古いトークで提案してくる営業担当者に出会うことがあります。2019年以前の成功事例や資料をそのまま使っているケースもあるので、話を聞く際は必ず「改正後のルールで試算されているか」を確認してください。

すでに加入している保険も、本当に税務上の効果が残っているかを再点検する価値があります。加入時の説明と現実の節税効果がかけ離れているケースは、決して珍しくありません。

短期退職金への1/2課税、2022年に廃止された

役員退職金は、うまく活用すれば大きな税メリットがある——そういった認識が広まっていた時期がありました。特に「短期在籍でも退職所得控除が使えるので、少ない勤続年数でも有利に受け取れる」という活用法が知られていました。

2022年の税制改正で、この仕組みは大きく見直されました。勤続年数5年以下の役員退職金については、退職所得控除額を差し引いた残額のうち300万円を超える部分に対して、1/2課税が適用されなくなりました。

具体的に言うと、短期在籍の役員に2,000万円の退職金を支払う計画を持っていた場合、改正後は課税額が想定よりも大幅に増える可能性があります。「昔の税理士に聞いて大丈夫と言われた」という記憶だけを頼りに進めると、決算後に大きな後悔につながります。

「確認しない」が一番のリスク

節税は「やった」で終わりではありません。制度は毎年動いていて、かつて有効だった手法が数年後には通用しなくなる、ということが珍しくない世界です。

顧問税理士がいても、全案件を毎年自動的に見直しているわけではないケースもあります。「前回相談したから大丈夫」という安心感が、実は一番危ない状態かもしれません。

特にマンション・法人保険・退職金の3点については、今期中に「現在のルールで試算し直してもらう」という場を設けることをおすすめします。節税の見直しは、やり直しが効くうちにするのが鉄則です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。