先日、年商3億円ほどの不動産会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。「顧問税理士に節税プランの見直しを提案されたんですが、今まで当たり前にやってきた策がいくつかもう使えないと言われて…何がどう変わったのか正直整理できていなくて」と。

似たような話、最近本当に増えています。2019年から2025年にかけて、税務当局はかなりの勢いで節税の「抜け穴」をふさいできました。以前は当然のように使われていたスキームが、今や逆効果になることすらある。今回は特に誤解が多い3つのスキームについて、何がどう変わったのかを整理します。

タワーマンション節税は「ほぼ終わった」

タワマン節税とは、市場価格と相続税評価額の乖離を利用した相続対策です。市場価格が1億円のタワマン高層階でも、相続税上の評価額が3,000万円台になるといったケースが横行していました。

ところが2024年1月から通達が改正され、相続税評価額に「市場価格との乖離補正」が義務づけられました。評価額が市場価格の60%を下回る場合、補正計算で引き上げられる仕組みです。以前は「1億円の物件を3,000万で評価できた」のが、今では評価額が7,000〜8,000万円に引き上げられるケースが多い。

相続対策としてのメリットがゼロになったわけではありませんが、「タワマンを買えば相続税がお得」という単純な話は完全に過去のものです。今からタワマン購入を検討している社長は、旧来の節税効果を前提に試算していないか、必ず確認してください。

法人保険の「損金算入」は2019年に別物になった

高解約返戻型の法人保険は、長年にわたって中小企業の定番節税ツールでした。保険料の全額または半額を損金算入しながら、解約時に返戻金を受け取れる設計です。節税しながら退職金の原資を積み立てられるとして、多くの社長が活用してきました。

しかし2019年の通達改正で、損金算入ルールが大きく変わりました。解約返戻率が高いほど損金算入できる割合が下がる仕組みに変更され、かつては「保険料全額損金」が当然だったものが、今では一部しか損金算入できないケースがほとんどです。

問題は、2019年以前に契約した保険をそのまま持ち続けている社長が少なくないこと。古い設計のまま放置していると、会計処理の誤りや税務調査でのリスクにつながることがあります。年間保険料が1,000万円規模の場合、税務上の扱いを誤ると影響額が500万円を超えることもあります。「昔契約した法人保険、まだ同じ処理でいいよね?」と思っている社長は、一度、契約内容と現在の通達を照らし合わせてみることを強くおすすめします。

オペレーティングリースは「節税」ではなく「課税の先送り」

航空機や船舶を使ったオペレーティングリースは、富裕層や法人の節税策として長く使われてきました。出資した年に大きな損失を計上できるため、黒字の多い年に加入するケースが目立ちます。

ただ、これは厳密には節税ではありません。課税の繰り延べです。出資時に計上した損失は、リース期間終了後に利益として戻ってきます。「今払う税金を将来に先送りしているだけ」という構造で、キャッシュフローの平準化には使えますが、税負担の総額は変わりません。

さらに今、大きな変化が迫っています。2027年から新リース会計基準の強制適用が予定されており、オペレーティングリースの会計処理が大幅に変わる見込みです。現在の「損失先行型」の効果が削られる可能性が高く、専門家の間でも「2025年以降に新規で組むのは慎重に」という声が増えています。今から検討している社長は、2027年以降の出口まで含めて試算してから判断してください。


「節税」と聞くと何となく安心してしまう感覚があるかもしれません。でも、通達は静かに、しかし着実に変わり続けています。「以前からやっていること」「周りがやっていること」を無批判に続けるのが、実は一番リスクの高い状態です。

今使っている節税策が今も有効かどうか、一度顧問税理士と一緒に棚卸しをしてみてください。特に法人保険は契約年次によって処理が異なるため、早めの確認が安心です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。