「うちの会社、利益が出てるのに社長の手取りが全然増えないんですよね」
先日、顧問の税理士を変えたばかりという製造業の社長から、こんな言葉を聞きました。話を聞いてみると、報酬額は毎期見直していたものの、節税の「組み合わせ設計」まではできていなかったことがわかりました。
役員報酬は一度決めたら原則として期中に変更できません。だからこそ、設計の段階で使える手を全部把握しておく必要があります。今回は節税効果が大きい手法を3位から順にご紹介します。
3位:iDeCoで年8万円をコツコツ積み上げる
まず手をつけやすいのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。
会社に企業年金がない役員なら、掛金は月2万3,000円、年間27万6,000円まで拠出できます。この全額が所得控除になるので、所得税率30%の方であれば単純計算で年間約8万円の節税になります。
「たった8万円か」と思う方もいるかもしれません。ただ、これを10年続ければ80万円です。しかも掛金自体が老後資産として積み上がっていくので、節税しながら資産形成もできる一石二鳥の制度です。
注意点は、60歳まで原則として引き出せないこと。資金繰りに余裕のある役員向けの施策です。
2位:役員社宅で住居コストを会社の経費に変える
節税効果で一気に大きくなるのが、役員社宅の活用です。
仕組みはシンプルです。会社が住宅を借り上げ、役員はその一部を「賃貸料相当額」として会社に支払う。この賃貸料相当額は国税通達で定められた計算式で算出されるのですが、実際の家賃よりかなり低くなることが多いのです。
たとえば月25万円のマンションを会社が借り上げたとします。通達の計算式で算出した賃貸料相当額が月3万円なら、役員は会社に3万円を支払えばよく、残りの22万円は給与扱いにならない会社の経費になります。年間に直すと264万円分の差額が出る計算です。
実際には建物の固定資産税や床面積などによって計算結果が変わります。ただ、うまく設計できれば年間50〜100万円規模の節税になるケースも珍しくありません。賃貸料相当額を正しく計算して支払うことがポイントで、著しく低い金額では給与認定されてしまいます。
1位:配偶者を役員にして「所得を分散」させる
節税効果が最も大きいのが、配偶者を役員として報酬を支払う「所得分散」の手法です。
役員報酬は累進課税の対象です。社長一人に報酬を集中させると、高い税率が適用されます。これを配偶者と分けることで、全体の税負担が大きく下がります。
社長の報酬を月20万円分配偶者に移したとします。配偶者の所得が増え、社長の所得が減ることで、所得税・住民税・社会保険料を合計すると、年間で200万円以上の差が生まれることもあります。
ただし、絶対に外せない条件があります。配偶者が実際に役員としての職務を担っていること。これがなければ税務調査で否認されます。会議への出席、経営判断への関与、社内での役割分担——こうした「実態」を日常的に積み上げておくことが、この手法を継続する上での生命線です。
3つ組み合わせると、年間200万円超の節税が現実になる
3位から1位まで見てきましたが、これを単独で使うより、3つを組み合わせることで効果は最大化します。
役員社宅で住居コストを会社経費に。配偶者への分散で累進税率を下げる。iDeCoで残った所得をさらに圧縮する。このセットがきれいにはまると、手取りを大きく変えずに年間200万円以上の税負担を下げることも、現実的に起こります。
どれも税法・通達に明記されたれっきとした制度活用です。ただし、設計を間違えると逆効果になることもあります。特に所得分散と役員社宅は金額設定が命なので、具体的な数字を出すときは必ず税理士と一緒に確認するようにしてください。
来期の役員報酬を決める前に、この3つを一度検討してみてください。同じ報酬額でも、設計次第で手取りは数百万円変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。