先日、年商1.5億円の建設業を営む社長から相談を受けました。「毎年1,000万円近く税金を払っているんですが、もっと減らせませんか?」という内容でした。
話を聞いていくと、その社長はずっと個人事業主のまま経営を続けていました。売上は順調に伸びているのに、使える節税の手段が限られていて、毎年決算のたびに「どうにかならないか」と頭を抱えているとのことでした。
個人事業主にも青色申告特別控除や小規模企業共済など有効な節税はあります。ただ、法人と比べたときに「使えない節税の多さ」は、正直、見過ごせないレベルです。今日は、法人にして初めて手に入る節税メリットを、3位から順に紹介します。
3位:役員報酬で「二重に」節税する
法人を設立すると、社長自身に役員報酬を支払えます。この役員報酬は法人側では経費(損金)として計上できるため、法人税の課税所得がそのぶん減ります。
さらに、受け取った側(つまり社長個人)には給与所得控除が適用されます。給与所得控除は最大195万円。報酬が年2,000万円以下であれば、この控除が自動的に適用されます。
つまり、同じお金が「法人の経費にもなり、個人の控除も受けられる」という二重の節税効果が生まれます。個人事業主は自分への「給与」という概念自体が存在しないため、この仕組みは原理的に使えません。規模が大きくなるほど、この差は広がっていきます。
2位:役員退職金は「最強の個人所得」
法人の経営者だけに許された節税として、退職金ほど強力なものはないと思っています。
たとえば勤続30年で役員を退任する場合、退職所得控除は1,500万円になります(800万円+70万円×20年)。そしてポイントは、控除後に残った金額の半分だけに課税されるという点です。
仮に同じ1,500万円を給与として受け取ると、最高55%の累進課税がかかります。退職金なら実質的な税率は数%〜十数%まで下がるケースもあります。キャリアの後半に向けて計画的に積み立てていけばいくほど、その差は大きくなります。
個人事業主も小規模企業共済という形で退職金代わりの積立はできますが、控除額の規模や柔軟性では法人の退職金には届きません。
1位:経費の「許容範囲」が別次元
個人事業主と法人を比べたとき、最も大きな差が出るのが経費として認められる支出の幅です。法人では次のような支出が損金(経費)として認められます。
- 社宅家賃:自宅を法人名義で借り上げ、家賃の一部を法人が負担できる
- 出張日当:旅費規程を整備すれば、実費ではなく日当として非課税支給が可能
- 法人保険:一部の保険料が損金算入でき、解約返戻金を退職金原資に活用できる
- 福利厚生費・慶弔費:一定基準内であれば損金算入が認められる
これらを合算すると、年間200万円以上の差になることも珍しくありません。個人事業主でも事業関連費用は経費にできますが、プライベートとの線引きが厳しく、法人ほどの柔軟性はありません。
「全員が法人化すべき」ではない
ここまで読んで「今すぐ法人にしよう」と思った方もいるかもしれません。ただ、法人化には維持コストも伴います。
社会保険料の負担増、税理士費用、赤字でも発生する法人住民税の均等割——これらを踏まえると、利益水準が年500万円を超えてきたあたりから、法人化のメリットがコストを上回るケースが多くなります。
もし「そろそろ法人化を考えてもいいかな」と感じているなら、まず今の利益規模で試算してもらうことをおすすめします。感覚ではなく数字で判断することが、後悔のない決断への近道です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。