先日、顧問先の社長から「うちはもう経費、全部やってますよ」という言葉を聞きました。決算前の打ち合わせでのことです。

でも話を深掘りしていくと、毎年50万円近く、本来落とせたはずの支出が「個人払い」のまま終わっていたんです。知らなかっただけで、ルールとしてはれっきとした経費になる支出が。

「知らなかった」では取り戻せないのが税金の怖いところです。今回は、意外と見落とされがちな経費を5つ、使いやすいものから順にご紹介します。

第5位:役員・従業員の健康診断費用

健康診断の費用、毎年ご自身で払っていませんか?

法人として「役員・従業員全員に受けさせる」という体裁を整えると、福利厚生費として全額経費計上できます。社長1人分だけを個人払いにしているケースが本当に多いのですが、会社の費用として処理するのが正しいやり方です。

ただし、「全員に等しく」という条件があります。社長だけが受けられる高額な人間ドック費用は過大な役員給与と認定されるリスクがあるため、会社の規程として整備したうえで運用するのが安心です。

第4位:業務に関係する書籍・新聞代

「本や雑誌は個人で買うもの」と思っている社長も多いですが、業務との関連が説明できれば全額経費にできます。

業界紙、経営雑誌、法律改正の解説本、マーケティング書など、年間でまとめると数万円になることも珍しくありません。領収書と「なぜ業務に必要か」の説明が用意できれば問題ありません。

ポイントは「業務との関連性」です。完全に個人的な趣味の本や、家族が読む小説などは難しい。でも「この本を読んで新商品のアイデアが生まれた」くらいの関連があれば、十分経費として認められます。

第3位:社用スマホの経費按分

スマートフォンを個人用と兼用で使っている社長は多いと思います。「プライベートにも使っているから経費にできない」と思い込んでいる方が実に多いのですが、そんなことはありません。

業務で使っている割合に応じて、按分計上できます。たとえば業務7割・プライベート3割であれば、通信費の70%を経費として落とせます。年間通信費が12万円なら、8.4万円が経費になる計算です。

重要なのは、その比率の根拠を社内で持っておくこと。「感覚で7割にしました」では税務調査で通りません。業務での使用実態をもとに、合理的な根拠を準備しておきましょう。

第2位:30万円未満の少額備品は即全額経費化

通常、備品やパソコンは資産として計上し、数年かけて減価償却するものです。でも中小企業(青色申告の適用を受けている法人)には、1点30万円未満であれば購入した期に全額経費化できる特例があります。年間300万円を上限として使える、中小企業者等の少額減価償却資産の特例です。

決算前にパソコン、カメラ、プリンター、業務用ソフトウェアなどを購入するなら、この枠を意識して動くと節税効果が大きくなります。ただし「節税のためだけに買う」はNGです。事業に本当に必要なものを、タイミング良く購入するのが正解です。

第1位:出張日当(旅費規程を作るだけで節税できる)

これが最も「知っている社長と知らない社長」で差がつく項目です。

社内で「旅費規程」という書類を作成し、出張のたびに日当を支給すると、受け取った側の所得税が非課税になります。会社の経費にもなる、受け取る側も税金がかからない、二重のメリットがある制度です。

たとえば社長が月に4回、地方出張をするとします。1回あたり5,000円の日当を旅費規程で定めていれば、それだけで年間24万円が丸ごと非課税で受け取れます。役員報酬に上乗せするよりも、手元に残るお金が圧倒的に多くなります。

注意点は、日当の金額が「社会通念上合理的な範囲」であること。役員だけ突出して高い金額にすると、役員給与として認定されるリスクがあります。一般的な企業の水準を参考にしながら、社内規程として正式に整備することが大切です。

5つ合わせると、年50万円超の節税になる社長も

これら5つを組み合わせると、年間50万円以上の節税になる社長も珍しくありません。法人税率を約30%とすると、50万円の経費が増えれば15万円の税額が減る計算です。さらに出張日当は社会保険料の算定基準外になるため、実質的な効果はもっと大きくなることもあります。

「どうせうちは小さい会社だから」と思っている社長にこそ、使える制度が眠っています。

旅費規程はWordで1枚作るだけで整備できます。まだ作っていないなら、今期中に税理士に相談して準備しておくことを強くおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。