先日、年商1000万円の個人事業主をしている知人から「税金が重くて、稼いでも手元に残らない」という相談を受けました。試しに税負担を計算してみると、所得税・住民税・個人事業税を合わせた実効税率が35%を超えていました。
稼いだお金の3分の1以上が税金に消えている計算です。同じ悩みを抱えている方、意外と多いんです。
個人事業主の税負担はじわじわ重くなる
個人事業主として売上が伸びると、税金の重さが一気に増してきます。所得税は累進課税なので、課税所得が増えるほど税率が上がる仕組みです。
これに住民税(一律10%)、さらに個人事業税(業種によって3〜5%)が乗ってくると、実効税率は30〜40%に達することも珍しくありません。「頑張って稼いでも手取りが増えない」という声をよく聞くのはそういう理由です。
累進課税の特性上、稼げば稼ぐほど税率が上がっていくため、年商が増えるにつれてこの問題は深刻になっていきます。
法人化すると何が変わるのか
法人を設立すると、社長自身は「役員」として会社から給与を受け取る形になります。このとき、給与所得控除が自動的に適用されます。
たとえば、役員報酬を年500万円に設定した場合、給与所得控除は約144万円。申請や特別な手続きなしに自動で差し引かれる金額です。同じ500万円の収入でも、個人事業主のときより課税対象額が144万円少なくなるわけです。
しかも、役員報酬を支払った残りの法人利益(800万円以下の部分)には、法人税・地方税を合わせた実効税率が約22%で済みます。個人事業主時代の35〜40%と比べると、10〜18ポイントの開きがあります。この二重の恩恵が、大きな節税効果を生み出します。
試算すると年間150万円前後の差になることも
少し具体的な数字で見てみましょう。
年商1000万円・経費200万円・課税所得800万円の個人事業主を想定します。個人事業主のままだと、所得税・住民税・個人事業税を合算した税負担は概算で280万円前後に達することもあります。
一方、法人化して役員報酬を500万円に設定すると、給与所得控除が効いた上に、残りの法人利益にも低税率が適用されます。税負担の合計が130万円台に収まるケースもあり、差額は年間150万円前後になることがあります。
月に換算すると、12万円以上のキャッシュが手元に残る計算です。これだけあれば、毎月の経営に余裕が生まれます。
設立コスト20万円は約2ヶ月で回収できる
「法人設立には費用がかかるのでは」という疑問も当然です。
登録免許税や定款認証費用などを含めると、法人設立には20万円前後のコストがかかります。ただ、年間150万円の節税効果があるなら、わずか2ヶ月もかからずに元が取れる計算です。
設立後のランニングコスト(社会保険料・税理士顧問料・法人住民税の均等割など)も考慮に入れる必要があります。それを差し引いても十分なメリットが残るケースがほとんどですが、自分の状況に当てはめた試算が重要です。
法人化はいつ検討すればいい?
「課税所得が700万円を超えたあたりが目安」とよく言われますが、これはあくまで一般論です。業種・家族構成・今後の売上見通しによっても最適なタイミングは変わります。
「まだ早いかな」と思っているうちに、何年分もの節税チャンスを逃してしまったというケースも少なくありません。逆に、売上が小さいうちに法人化してランニングコストが重荷になるケースもあります。
決算が近いなら、今期中に税理士へ「法人化したらどうなるか」のシミュレーションを依頼するのがおすすめです。数字さえ揃っていれば試算は短時間でできることが多いので、まずは一度、現状の数字を持ち込んで相談してみてください。後回しにするほど、払わなくてよかった税金が積み上がっていきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。