先日、法人を設立して2期目に入ったという社長から、こんな言葉を聞きました。

「1年目は事業に必死で、税務周りは後回しにしてしまって……あとで調べたら、やっておけばよかったことばかりで。」

法人1年目は、とにかく走りながら考える期間です。それ自体は間違いではない。でも、このタイミングにしか使えない節税の手続きがいくつかあって、見逃すと「取り戻せない損」が静かに積み上がっていきます。

今回は、法人1年目にやってしまいがちな節税のミスを3つ、具体的な金額と一緒に整理しました。設立から日が浅い方は、ぜひ今すぐ確認してみてください。

3位:役員報酬を「なんとなく」決めてしまった

法人を設立したら、まず自分への給与、つまり役員報酬を決める必要があります。ここで多くの方が見落とすのが「決定の期限」です。

役員報酬を損金(経費)として認めてもらうには、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を確定し、以後1年間は原則として変更できません。この期限を過ぎてから「やっぱり月20万円上げよう」と変更しても、増えた分は損金にならない。

月20万円の差は、年間にすると240万円です。法人税率30%なら72万円の税負担の差になります。しかも1期目でこのミスをしてしまうと、その期はもう取り返しがつきません。

「最初は低く設定しておいて、様子を見ながら上げればいい」と考える方は要注意です。上げるなら最初の3ヶ月以内、それがルールです。

2位:消費税の届出を出し忘れた

設立2年目まで消費税が免税になるケースが多いため、「どうせ払わなくていいし」と届出関係を後回しにしてしまう方が多いです。ところが、場合によっては「あえて課税事業者を選ぶ」ことで、消費税の還付を受けられることがあります。

たとえば設立1年目に、高額な機械を購入した、オフィスの内装工事をした、という場合。仕入れや設備の購入時に支払った消費税が、売上に係る消費税を上回れば、その差額が戻ってきます。これを「消費税の還付」と言います。

この恩恵を受けるために必要なのが「消費税課税事業者選択届出書」の提出で、還付を受けたい課税期間の開始前日までに出さなければなりません。出し忘れた場合、その1年間は取り返しがつきません。

設備投資の多い1年目を過ごす予定の方——製造業、飲食業、クリニック、美容室など——は、設立直後に税理士へ相談しておくべき最重要ポイントのひとつです。

1位:小規模企業共済に入っていなかった

これが、一番もったいないミスです。

「小規模企業共済」は、中小企業の経営者向けの退職金積立制度で、掛け金の全額が所得控除になります。月1,000円から最大7万円まで積み立てられ、満額なら年84万円が所得から丸ごと控除されます。

実効税率が30%のケースで計算すると、年間の節税効果は約25万円。10年続ければ250万円の差になります。しかも積み立てたお金は将来の退職金・廃業時の受け取りに使える。増やしながら節税できる、経営者にとって非常に使い勝手のいい制度です。

「知らなかっただけで、ずっと入っていなかった」という社長が本当に多い。入れる状態なのに活用しないのは、毎年25万円をそっと捨てているのと同じです。

加入できるのは、小規模企業の役員や個人事業主など、一定の要件を満たす方に限られます。自分が対象かどうかは、中小機構の窓口か顧問税理士に確認してみてください。


法人設立の1年目は、節税の選択肢が一番広いタイミングでもあります。役員報酬は期限内に適切に設定する、消費税の届出は設備投資の予定に合わせて判断する、小規模企業共済にはすぐ加入する——この3つを最初の3ヶ月で整えておくだけで、長い目で見れば数百万円単位の差が生まれます。

もし設立から日が浅いなら、今期中に一度「今できる節税の棚卸し」を税理士と一緒にやっておくことを強くおすすめします。手を打てるのは、今です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。