先日、不動産を複数棟持つ社長からこんな相談を受けました。

「決算のたびに減価償却は計上しているんですけど、正直よくわかってなくて。担当の税理士にお任せしてます」

話を聞いてみると、建物をずっと「一本」で償却していた。エアコンも給湯器も電気設備も、全部まとめて建物扱い。これ、実は非常にもったいない処理なんです。

建物と付属設備、一緒に償却していませんか?

法人が不動産を持つとき、多くの会社が建物全体をひとつの資産として減価償却します。間違いではありません。でも、エアコンや給湯器、電気設備、換気システムといった付属設備は、建物本体とは別に計上できます。

ポイントは耐用年数の違いです。

たとえば鉄骨造の事務所なら、建物本体の耐用年数は38年。でも内部のエアコンや給湯器は15年程度。同じ金額なら、短い年数で割り算すれば1年あたりの償却額は当然大きくなりますよね。これが「区分償却」の基本的な考え方です。

年50万円以上、経費が増えることもある

「うちはそんな高い設備ないし」と思う方もいるかもしれません。

でも実際に洗い出してみると、意外に多いんです。エアコン、給湯室、照明、防犯カメラ、インターフォン、電気配線。ひとつひとつは数十万円でも、まとめると数百万円になることは珍しくない。

正しく分けて計上すると、年間の経費が50万円以上増えるケースは十分あります。

法人税率34%なら、50万円 × 34% で年17万円前後の節税です。10年続ければ170万円。「知っているか知らないか」だけの差で、これだけ変わります。

どうやって分けるのか

実務的には、不動産を取得したときの請負契約書や工事の内訳書を見て、各設備の金額を確認します。設備ごとに耐用年数を当てはめて、別々の資産として計上していく作業です。

書類が残っていれば、税理士と一緒に仕分けができます。書類がない場合は合理的な見積もりで対応することもありますが、根拠が曖昧だと税務調査で否認されるリスクがあります。やり方を誤ると逆効果になるので、ここは専門家に確認してから動くのが安全です。

対象になる主な付属設備

具体的にどんなものが区分できるか、代表的なものをあげておきます。

  • 電気設備(照明、コンセント・スイッチ配線)
  • 給排水設備(給湯器、配管)
  • 空調設備(エアコン、換気扇)
  • 防犯・通信設備(防犯カメラ、インターフォン)
  • 内装仕上げ(床材、壁紙など)

これらはすべて、建物本体とは異なる耐用年数が定められています。契約書や工事の見積書・請求書があれば、そこから切り出せる可能性は高いです。

「もう何年も一本で申告してきた」という方へ

諦めないでください。要件を満たせば、過去の申告を修正して未計上分を取り戻せる場合があります。

もちろん全ケースで遡れるわけではなく、申告の時効や状況によって判断が変わります。ただ、特に不動産を取得してから年数が浅い場合や、直近の決算での処理が不完全だった場合は、修正申告のメリットが大きくなることもある。「もう手遅れ」と諦める前に、一度確認してみてください。

担当税理士に一言聞いてみてください

法人で不動産を持っているなら、今すぐ確認してほしいことがあります。「うちの不動産、付属設備は分けて計上できていますか?」と担当税理士に一言聞いてみてください。

これだけで節税の扉が開くことがあります。決算が近い方は特に、今期中に動いておくのがおすすめです。減価償却の見直しは、追加投資ゼロで経費を増やせる数少ない手段のひとつです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。