先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。
「そろそろ息子に会社を継がせたいんですが、株の移し方でどれくらい税金がかかりますか?」
その会社は年商約10億円。株価を試算してみると、3億円を超える評価額でした。これを後継者の息子さんに贈与するとなると、贈与税だけで1億円を超えるケースも出てきます。
「それは無理だ……」と頭を抱えるのは当然です。でも、実はこの重い税負担を大幅に軽くできる制度が、今もまだ使えます。
特例措置なら、贈与税・相続税が100%猶予される
「事業承継税制」という言葉は聞いたことがある方も多いでしょう。ただ「自分には関係ない」「難しそう」と思って、詳しく調べていない社長も少なくありません。
この制度のポイントを一言で言うと、後継者に自社株を引き継ぐときの贈与税・相続税を、最大100%猶予できるというものです。
通常であれば、株を生前贈与すれば贈与税が、相続で引き継がれれば相続税がかかります。業績が好調な会社ほど株価は高く、税負担も膨らみます。億単位になるケースは珍しくありません。
特例措置を使えば、この税金の支払いを大幅に先送りにできます。そして後継者が一定の要件を満たし続けた場合、最終的に猶予税額が免除になるケースもあります。
「一般措置」との違いを知っておく
事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。
一般措置は以前から存在する制度で、猶予対象は議決権株式の3分の2まで、猶予割合は贈与税80%・相続税80%にとどまります。
特例措置はこれを大幅に拡充したもので、猶予割合が贈与税・相続税ともに100%になります。さらに最大3人の後継者に対応しており、共同経営の形を取る会社にも使いやすくなっています。
この特例を受けるためには、事前に「特例承継計画」を作成し、都道府県知事に提出する手続きが必要です。この計画の作成には、認定経営革新等支援機関(税理士や商工会議所など)の確認も求められます。
2027年12月末が本当のリミット
ここが最大のポイントです。
特例措置が使えるのは、2027年12月31日までに贈与または相続が行われた場合に限られます。それ以降に株を引き継いでも、この特例は適用されません。
「まだ2年ある」と思う方もいるかもしれませんが、実際には準備にかなりの時間がかかります。特例承継計画の作成、都道府県への申請、税理士との綿密な打ち合わせ——これらを丁寧に進めると、余裕を持って動くには今すぐ着手する必要があります。
締め切りギリギリに動いても、申請が間に合わなかったり、制度の理解が不足したまま進めてしまうリスクがあります。
こんな社長は特に急いでほしい
特例措置が特に効果的なのは、次のようなケースです。
自社株の評価額が高い会社(業績が好調なほど税負担が重くなる)、後継者がすでに決まっている会社、そしてオーナー経営者が60代後半に差し掛かってきた会社——こうした条件に当てはまるなら、今すぐ動き始める価値があります。
一点、注意しておきたいのは「猶予」という性質です。猶予されている税金は、後継者が廃業・売却などの要件外れを起こした場合、利子とともに復活します。制度を使ったら終わりではなく、後継者がその後も一定期間、経営を継続していくことが前提になります。
「まだ考えていない」なら今日が動くべき日
2027年末というデッドラインは、カレンダー上の話だけではありません。準備期間を逆算すると、実質的な判断タイムリミットはもっと早く来ます。
「うちの会社は使えるのか」「どれくらいの節税になるのか」——まずはその確認だけでも、顧問税理士に相談してみてください。一度試算してもらうだけで、動くべきかどうかが見えてきます。
後継者への引き継ぎをすでに視野に入れているなら、今がまさにそのタイミングです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。