先日、不動産オーナーの社長からこんな相談を受けました。
「マンション2棟、家賃収入は年間800万円あるのに、なぜか手元に残るお金が思ったより少なくて……」
話を聞いてみると、物件は全て個人名義。会社の役員報酬と合算すると、課税所得はゆうに3,000万円を超えていました。
これは「もったいない」どころの話ではありません。
個人保有の不動産収入は「最高税率」で課税される
日本の所得税は累進課税です。給与所得と不動産所得は合算されるため、もともと高い役員報酬を受け取っている社長にとって、家賃収入は「一番高い税率」のブラケットに乗ることになります。
課税所得が4,000万円を超えると、所得税と住民税を合わせた実効税率は50%超。年間800万円の家賃収入のうち、400万円以上が税金として消えていく計算です。
「稼いでも稼いでも手残りが増えない」という感覚は、ここに原因があります。
同じ物件でも、法人で持つと税率が変わる
では、同じ物件を法人名義にするとどうなるでしょうか。
法人税の実効税率(法人税+地方税)は、中小企業の場合で22〜34%程度です。個人の最高税率50%超と比べると、最大20%以上の差があります。
たとえば、年間300万円の減価償却費が出る物件の場合を考えてみましょう。
- 個人保有(実効税率50%): 300万円 × 50% = 150万円の節税効果
- 法人保有(実効税率34%): 300万円 × 34% = 102万円の節税効果
数字だけ見ると法人の方が少なく見えますが、これは減価償却費部分だけの話。課税対象となる収入全体に当てはめると、同じ家賃収入でも手元に残る金額が大きく変わります。
先ほどの800万円の例に戻ると、個人50%課税で手残り400万円、法人34%課税なら手残りは528万円。差額は年間128万円です。10年で1,200万円超のインパクトになります。
法人保有ならではの「もう一手」
税率差だけでも十分大きいのですが、法人には個人にはない節税手段がさらに用意されています。
ひとつは役員報酬による所得分散です。法人が受け取った家賃収入を、配偶者や子どもへの役員報酬として分散させることができます。各人が低い税率のブラケットに収まれば、一人に集中させるよりも全体の税負担がグッと下がります。
もうひとつは経費計上の幅の広さ。個人の不動産所得では認められにくい費用も、法人経由であれば損金算入できるケースがあります。出張費、通信費、専門書代など、事業に関連する支出の幅が個人と比べて格段に広くなるのが法人の強みです。
「法人化すれば全て解決」とはいかない理由
メリットが多い反面、注意すべき点もあります。
まず移転コストの問題。個人から法人へ物件を移すと、不動産取得税と登録免許税がかかります。移転コストが節税効果を上回らないか、シミュレーションは必須です。
次にローンの問題。個人名義のローンを法人に引き継ぐのは簡単ではなく、金融機関との再交渉が必要なケースも多くあります。
そして維持コスト。法人は赤字でも住民税の均等割(年7万円前後)がかかり、税務申告の手間も増えます。
「これから買う」なら最初から法人で
すでに個人名義で物件を持っている社長は、移転コストとの兼ね合いを税理士と相談しながら判断することが必要です。一方で、これから物件を購入するなら、最初から法人名義で買う方が圧倒的に有利です。
特に築古の収益物件で減価償却費が大きく出る場合、税率差の恩恵をフルに受けられます。減価償却費 × 税率差が、毎年の「確定した節税」として積み重なっていきます。
「もう個人で買ってしまった」という場合も、諦める必要はありません。相続・事業承継のタイミングや、ローン完済後に移転するという選択肢もあります。
不動産の節税は、一度仕組みを作ってしまえば毎年自動的に効いてくる「再現性のある節税」です。次の物件取得を検討しているなら、法人名義での購入を選択肢に入れておくことを強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。