先日、建設業を営む社長からこんな話を聞きました。「合同会社にすれば節税になると聞いて設立したのに、結局なんのメリットもなかった」——そう苦笑いしながら、融資の審査に落ちた経緯を教えてくれました。

年商5,000万円まで事業を育てた実力者が、設立の段階で「なんとなく聞いた情報」に乗ってしまったのです。この話、実は珍しくありません。

合同会社を選んだ理由、その多くが誤解

合同会社が注目されるようになったのは、設立費用の安さが大きな理由です。株式会社の設立には最低でも約20万円程度かかりますが、合同会社なら約6万円前後で済みます。この差は確かに魅力的に映ります。

ただ、「安く設立できる=節税になる」というのは、まったくの別の話です。設立コストが安いのはあくまで初期費用の話であって、その後の税負担とは無関係なのです。

法人税率は株式会社も合同会社も同じ

多くの社長が見落としているのが、この一点です。

法人税・法人住民税・法人事業税——これらの税率は、会社の形態に関係なく同じ水準が適用されます。資本金1億円以下の中小法人であれば、実効税率はおおむね20〜25%程度。合同会社だからといって税率が下がることはありません。

役員報酬を使って所得を分散する、退職金を積み立てて退職時に一括で受け取る、経費を適切に計上して課税所得を圧縮する——こうした節税の王道は、株式会社でも合同会社でも、まったく同じように活用できます。

見落としがちなデメリット:融資と信用

冒頭の社長が直面したのが、金融機関からの評価の問題です。

日本の金融機関、特に地方銀行や信用金庫は、融資先の審査に際して「株式会社か合同会社か」を確認するケースがあります。合同会社は歴史が浅く、情報開示義務(決算公告)がないため、財務状況が外部から見えにくい構造になっています。これが「不透明な会社」と見なされることがあるのです。

融資の審査に通りにくくなる、または金利条件が不利になる——これは、節税で浮かせた設立コストをはるかに超えるダメージになりえます。田中さんの場合、融資が思うように受けられず、設備投資のタイミングを逃したと言っていました。

合同会社が向いているケースも確かにある

誤解のないよう補足しておくと、合同会社が完全に不利というわけではありません。

定款の自由度が高いため、出資比率と関係なく利益分配の割合を柔軟に設定できる点は、共同経営者がいる場合などに有効です。また、決算公告が不要なことを積極的に評価する場面もあります。

外資系企業の日本法人や、IPOを目指さない小規模な事業体として運営するケースでは、合同会社が合理的な選択になることもあります。ただしそれは「節税になるから」ではなく、「組織設計の柔軟性が必要だから」という理由です。

設立形態より、設立後の税務設計が9割

この話で一番伝えたいのは、設立時の形態選びよりも、設立後にどう節税設計を組むかのほうがはるかに重要だということです。

役員報酬の金額をどう設定するか、社宅制度を使うか、小規模企業共済や経営セーフティ共済に加入するか——こうした具体的な打ち手が、実際の税負担を左右します。

これらはすべて、合同会社でも株式会社でも使えます。設立の書類よりも、設立後に誰がどんな税務設計をしてくれるかを先に考えるべきでしょう。

これから法人を設立しようと考えているなら、形態を決める前に一度、顧問候補の税理士に「うちのビジネスモデルにはどちらが合っているか」を相談してみてください。初回相談が無料の事務所も多いので、設立コストを惜しんで後悔するより、その一手間を先にかけるほうがずっと賢い判断です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。