先日、独立して3年目の社長からこんな相談を受けました。「なんとなく株式会社にしたんですけど、合同会社のほうがよかったですか?」と。
その社長、決算公告という義務の存在すら知らなかったのです。毎年6万円、払い続けているコストに気づかないまま。
法人税の税率は、どちらも同じです
まず大前提として確認しておきたいのですが、合同会社と株式会社で法人税の税率は変わりません。利益800万円以下の軽減税率も、消費税の扱いも、法人住民税も、すべて同じルールが適用されます。
「合同会社のほうが税金が安い」という話を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、それは正確ではありません。税率が違うのではなく、毎年かかるコストの仕組みが違うのです。
設立時点で、すでに約19万円の差がある
株式会社を設立するには、定款認証料や登録免許税などを合計すると、おおよそ25万円が必要です。一方、合同会社の設立費用は約6万円。初期コストだけで約19万円の開きがあります。
「それくらいは許容範囲」と思う方もいるでしょう。でも、本当に注意してほしいのは設立後に毎年発生し続けるコストの違いです。
株式会社には、毎年6万円かかる「決算公告」がある
会社法の規定により、株式会社は毎年決算後に財務情報を外部に公開する「決算公告」を行う義務があります。最もよく使われるのが官報への掲載で、これが年間約6万円かかります。
合同会社には、この義務がありません。
地味に見えるかもしれませんが、10年続ければ60万円、20年なら120万円の差です。「うちは一度もやったことない」という社長も実際にいますが、それは法律上の義務を果たしていない状態になりますので、ご注意ください。
合同会社だけが持つ「利益分配の自由」
節税の観点でもう一つ見落とされがちなのが、利益の分配方法です。
株式会社では、配当は出資比率に連動します。50%出資しているなら、利益の50%しか受け取れません。ところが合同会社では、定款に定めることで、出資比率とは無関係に利益を分配することができます。
たとえば、夫婦で50%ずつ出資していても、実際の業務貢献度に応じて利益の7割を一方に分配する設計が可能です。家族経営の会社では、この柔軟性が節税戦略の選択肢を大きく広げてくれます。ただし設計を誤ると税務リスクにもなりますので、必ず専門家と相談しながら進めてください。
合同会社が向いているケース、株式会社が必要なケース
「では全員合同会社にすればいい」という話では、もちろんありません。
将来的にIPO(株式上場)を目指すなら株式会社一択です。また、大手企業との取引が多い業種では、まだ株式会社のほうが信頼を得やすいケースもあります。
一方で、コンサルタント・士業・フリーランスの法人化、副業の法人化、家族経営の小規模法人など、外部から資金調達をしないビジネスモデルでは、合同会社が合理的な選択になることが多いです。
これから法人を作る方へ
「なんとなく株式会社のほうが立派に見える」という理由だけで選んでいるとしたら、一度立ち止まってみてください。設立コストの差19万円、毎年の決算公告6万円、10年で60万円超の差は、事業の初期フェーズではとくに重くのしかかります。
まだ法人化していない方も、すでに法人を持っている方も、次の顧問税理士との面談でぜひ「合同会社と株式会社、うちはどちらが合っていますか?」と聞いてみてください。その一問が、長期的なコスト削減につながるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。