先日、知人の経営者からこんな連絡が来ました。「インボイス登録してから、消費税が急に増えた気がする。これって仕方ないんですか?」

話を聞いてみると、登録後の申告方法をとくに調べないまま、税務署の案内どおりに本則課税で申告していたとのこと。「そういう制度だから」と思い込んでいたそうです。

でも、それは必ずしも正しい選択ではありませんでした。

登録後に「どの方式で申告するか」が、実は一番大事

消費税の申告方法には、大きく分けて本則課税・簡易課税・2割特例の3つがあります。どれを選ぶかで、納税額が数十万円単位で変わることがあります。

ところが、インボイス登録の手続きそのものに気を取られて、申告方式の選択を後回しにしてしまう方が少なくありません。登録したこと自体で満足して、「あとは税務署に言われた通りに」となりがちなんです。

年商2000万円の社長が、80万円余計に払っていた

具体的な例を見てみましょう。

年商2000万円のWebデザイン会社を経営する鈴木社長は、メインクライアントからの要望を受けて2023年10月にインボイス登録をしました。それ以前は売上が1000万円を超えておらず、消費税を納める義務のない免税事業者でした。

初めての消費税申告では、何も確認せずに本則課税を選択。結果、年間約120万円を納税しました。

ところが後から税理士に指摘されて気づいたのですが、鈴木社長のケースでは「2割特例」が使えたんです。この特例を使えば、納税額は約40万円で済んでいた。差額はちょうど80万円。1年間で80万円を余分に払っていたことになります。

2割特例は「受け取り消費税の2割だけ納めればいい」という制度

2割特例とは、読んで字のごとく、受け取った消費税額の20%だけを納税すればよいという特例です。

対象になるのは、免税事業者だった方がインボイス登録をきっかけに課税事業者になったケースです。鈴木社長のように、「取引先に言われたから登録した」という方が典型的な対象者です。

計算式はとてもシンプルで、年商2000万円(税込2200万円)であれば、受け取り消費税は200万円。その2割ですから、納税額は40万円になります。経費や外注費が少ないサービス業や一人法人にとっては、本則課税より大幅に有利になることが多いです。

期限は2026年9月末。今期が最後のチャンスかもしれない

この特例には期限があります。2割特例が適用できるのは、2026年9月30日を含む課税期間までです。

3月決算の法人であれば2026年3月期が対象、9月決算なら2026年9月期まで使える可能性があります。前の申告で本則課税を選んでいた場合でも、要件を満たしていれば次の申告から切り替えられます。

ただし、すでに簡易課税を選択している場合や、法人・個人の課税期間の違いによって判断が変わることもあるため、自分が対象かどうかは必ず税理士に確認してください。

2026年10月以降に備えて、今のうちにシミュレーションを

2割特例が終わったあとは、本則課税か簡易課税のどちらかになります。

簡易課税は業種ごとの「みなし仕入率」で計算するため、外注費や仕入れが少ない業種には有利に働くことが多いです。一方、製造業や卸売業など仕入れ比率が高い業種は、本則課税のほうが安くなるケースもあります。

どちらが得かは会社の経費構造によって異なるため、「期限が来たら自動的に損する」ということはありませんが、何も考えずに放置すると損する可能性はあります。

まだ申告方式を一度も見直したことがないなら、今期の決算前に税理士と一緒にシミュレーションしておくことを強くおすすめします。インボイス登録後の最初の数年は、選択肢が多い分、動きやすいタイミングでもあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。