先日、年商4億円の建設会社を経営するA社長から、こんな相談を受けました。

「毎年、利益が出るたびに税金に持っていかれる感覚がある。何とかならないか」

決算書を確認すると、経常利益は約5,000万円。そのうち役員報酬として個人で受け取っている部分には、所得税と住民税を合わせると実効税率が50%近くになっていました。

稼いだお金の半分近くが税金で消えていく——それが現実です。

知っている社長と知らない社長の差

利益が出ている会社の社長には、大きく二つのタイプがいます。

ひとつは、会社の利益をそのまま役員報酬として受け取り、毎年高い所得税・住民税を払い続けているタイプ。もうひとつは、「持株会社」という構造を使って、税負担を大幅に下げているタイプです。

この差は、知っているか知らないかだけ。でも、その結果は年間で数百万円から1,000万円以上の差になることがあります。

持株会社の仕組みをシンプルに説明すると

持株会社とは、自分の事業会社の株式を保有するために設立する会社のことです。オーナー社長が直接事業会社の株を持つのではなく、間に「ホールディングス会社」を挟んで、そこが株を保有する形にします。

この構造にすると、事業会社が稼いだ利益を「配当」として持株会社に移すことができます。

そして、ここが核心です。

法人が子会社から受け取る配当には、「受取配当等の益金不算入」という税務上の優遇措置が適用されます。一定の条件を満たせば、受け取った配当の大部分が法人税の課税対象から外れるのです。

個人で受け取るとどうなるか?

たとえば、事業会社の利益が5,000万円あったとします。

オーナーが個人で役員報酬として受け取ると、所得税と住民税の合計で最大55%が課税されます。手残りは2,250万円前後という計算です。

一方、持株会社で受け取る場合、法人税率は23.2%。さらに「益金不算入」の適用で実質的な税負担はさらに下がり、手元に残るお金の額が大きく変わってきます。

年商3〜5億円クラスの会社であれば、この仕組みを活用するだけで年間500〜1,000万円規模の節税効果が見込めるケースも珍しくありません。

持株会社に蓄積したお金はどう使う?

「持株会社に利益を溜めても、個人で使えないなら意味がないのでは?」

そう思う社長も多いのですが、そんなことはありません。持株会社で蓄積した資金は、新事業への投資、不動産購入、M&Aの資金として活用できます。また、将来的な事業承継や株式移転の場面でも、持株会社があると有利に動けることが多いです。

個人消費には直接使えませんが、「会社のお金として最大限活用できる余力」が増えるというのが正確な表現です。資産を守りながら次の一手を打つための器として機能します。

万能ではない:こんな会社には向かない

持株会社スキームには、当然ながらデメリットや注意点もあります。

設立・維持にコストがかかること、複数の会社の決算・税務申告が必要になること、設立のタイミングや資本構成を誤ると期待した節税効果が出ないこと——これらは知っておくべき現実です。

特に、事業会社の利益水準が低い段階では設立してもメリットが薄く、「年間利益がある程度積み上がっている会社向けの設計」であることを理解しておく必要があります。年商3億円を超え、利益が安定して出てきたタイミングが、検討を始める目安のひとつです。

A社長のその後

冒頭のA社長には、まず自社の利益水準と今後の資金計画を整理してもらい、持株会社設立が本当に有利になるかをシミュレーションしました。

年商4億円・利益5,000万円という規模で試算すると、年間700〜800万円程度の節税効果が見込める結果になりました。「こんなに違うのか」と、A社長は驚いていました。

知っているかどうかで、これだけの差が生まれます。

もし「自分の会社でも使えるか知りたい」と思ったなら、顧問税理士に「持株会社を使った節税シミュレーションをしてほしい」と一言伝えてみてください。それだけで、話が大きく動き出すことがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。