先日、従業員30名ほどの卸売業を営む社長から、こんな連絡が届きました。
「うちはもう電帳法の対応、済んでいますよ。メールで届いた請求書はちゃんとPDFを印刷してファイリングしているので」
……正直、ヒヤッとしました。その対応、2024年からは完全にアウトなんです。
「印刷して保存」はもう通用しない
2024年1月から、電子帳簿保存法の猶予期間が終わり、完全義務化がスタートしました。何が変わったかというと、メールやクラウドサービスで受け取った請求書や領収書は、受け取ったデータのまま保存することが義務になったのです。
紙に印刷してバインダーに挟んでおけば十分、という時代はもう終わっています。電子データとして受け取ったものは、電子データのまま管理する——この原則を押さえておいてください。
では具体的に、どこでつまずきやすいのか。社長に知っておいてほしい「3つの落とし穴」をお伝えします。
落とし穴①:タイムスタンプの期限が思ったより短い
電子データで請求書を受け取ったとき、改ざん防止のために「タイムスタンプ」を付与するか、それに準ずる社内ルールを整備しなければなりません。
ここで多くの会社が見落とすのが、その期限の短さです。受領した日から、最短で翌営業日中に電子保存の処理を完了させる必要があります。「月末にまとめて処理しよう」というやり方では、もう対応できません。
請求書が届くたびに、その都度データを保存・管理する運用フローを社内で作ること。これが第一の関門です。
落とし穴②:違反したときのペナルティが重すぎる
「多少ルールを守れていなくても、バレなければいいんじゃ?」と思う方もいるかもしれません。ただ、税務調査でこの保存要件の不備が発覚した場合、青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。
青色申告が取り消されるとどうなるか。特別控除や各種の税務上の優遇措置が使えなくなります。会社の規模や利益水準によっては、年間の税負担が数百万円単位で増える——そんな事態も現実に起こりえます。
「書類の保存ルールの話でしょ」と軽く見ていると、資金繰りに直結するリスクになりかねないのが電帳法の怖いところです。
落とし穴③:「対応済み」のつもりが要件を満たしていない
冒頭の社長のケースがまさにこれです。なんとなく対応した気になっているけれど、実際には法令の要件を満たしていない——これが最も多いパターンです。
電帳法が求める電子保存には、単にデータを保存するだけでなく、検索機能の確保(取引年月日・金額・取引先で検索できること)や、ディスプレイ・プリンタでの速やかな出力環境の整備なども含まれています。
自社のフォルダにPDFを突っ込んでいるだけでは、これらの要件を満たせていない可能性が高いです。
現実的な解決策は「クラウド会計ソフトへの移行」
これだけ聞くと頭が痛くなるかもしれませんが、対応策はシンプルです。電帳法に対応したクラウド会計ソフトを使うこと、これが最速かつ最もコスパの良い方法です。
freeeやマネーフォワードクラウドなど、主要なクラウド会計ソフトはすでに電帳法の要件をクリアする機能を搭載しています。月額数千円の費用で、タイムスタンプの付与も検索要件も自動でクリアできる環境が整います。
人件費や税務リスクと比べれば、圧倒的に安い「保険」です。
まず自社の現状を確認してほしい
もし今、「うちはどうだろう?」と少しでも不安を感じたなら、今すぐ確認することをおすすめします。取引先からの請求書や領収書が、どのルートで届いて、どのように保存されているか——経理担当者に一度ヒアリングしてみてください。
税務調査は、来ると分かってから準備しても間に合いません。電帳法の対応は「まあそのうち」ではなく、今期中に整備しておくべき経営課題のひとつです。自社の状況が法令要件を満たしているか、ぜひ一度、顧問税理士に確認を取ってみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。