先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。

「今期、予想外に利益が出てしまって。税理士には『しっかり税金払ってください』と言われたんですが、何か手はないですか?」

試算すると、利益は約3000万円。そのまま納税すると、法人税・住民税・事業税を合わせておよそ900万円が飛んでいく計算です。決算まで残り2ヶ月というタイミングでした。

そのとき私が紹介したのが、オペレーティングリースという仕組みです。


知ってる社長と知らない社長で、手残りが変わる

オペレーティングリースとは、簡単に言うと「航空機や船舶のリース事業に出資する」スキームです。

JALやANAといった航空会社が使っている大型機材、あるいはタンカーや貨物船。ああいった高額な資産を複数の投資家(法人)が共同で購入し、航空会社や船会社にリースして収益を得る仕組みです。

なぜ節税になるかというと、出資した年に出資額の全額(あるいは大部分)を損金として計上できるからです。

たとえば3000万円を出資すれば、その期に3000万円の損金が生まれる。利益3000万円と相殺すれば、課税所得はゼロに近づく。結果として、900万円の税金が大幅に圧縮できるわけです。


「節税」ではなく「繰り延べ」という理解が正確

ここで一点、正確に理解しておいてほしいのですが、オペレーティングリースは「税金をゼロにする」ものではありません。

正確には、「今期払う税金を将来に先送りする」繰り延べの仕組みです。

数年後(一般的には5〜10年程度)にリース期間が終わると、機材が売却されます。その売却益が出資者に分配され、今度はそれが益金として課税されます。

つまり流れはこうなります。

  • 出資年:損金が立ち、税金を抑えられる
  • リース期間中:特に動きなし
  • 満期・売却時:売却益が益金として課税される

「結局、後で税金がかかるなら意味がないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。でも、ここが重要なポイントです。

今払わなかった税金分のキャッシュを、数年間事業に使えるのです。

900万円を今すぐ国に払うか、5年間手元に置いて運転資金や設備投資に充てるか。どちらが経営にとってプラスかは、言うまでもないですよね。


最低出資額と損金算入率の目安

実際に検討するとなると、気になるのが金額感です。

オペレーティングリースの最低出資額は、一般的に1口1000万円〜3000万円程度が多いです。スキームによっては1口5000万円というものもあります。つまり、ある程度の利益規模がある法人向けの節税策です。

損金算入率はスキームごとに異なりますが、出資額の80〜100%が損金になるものも存在します。100%損金のスキームであれば、3000万円出資で3000万円の損金。非常にインパクトが大きいです。

ただし、損金算入率が高いスキームほど、満期時の益金も大きくなる傾向があります。「今の税率」と「将来の税率」の見通し、そして会社のキャッシュフロー計画とのバランスをきちんと確認することが欠かせません。


検討前に必ず確認すべきこと

オペレーティングリースは有効な節税手段ですが、誰にでも無条件にすすめられるものではありません。

まず、出資したお金は満期まで原則として戻ってきません。5〜10年間、その資金は固定されます。キャッシュフローに余裕がある法人でないと、途中で資金繰りに困る可能性があります。

次に、満期時の課税タイミングと自社の利益計画を合わせることが重要です。満期の年にたまたま利益が少なければ、益金課税の影響を抑えられます。逆に好業績が続く年に満期が重なると、思わぬ税負担になることも。

また、スキームによっては航空機の需要変動や為替リスクが絡んでくるケースもあります。コロナ禍に航空需要が激減したとき、一部のスキームで想定外の影響が出たことは記憶に新しいです。

これらを踏まえると、顧問税理士と一緒に複数年のシミュレーションを行い、自社の状況に合うかどうかを慎重に見極めることが何より大切です。


決算直前でも間に合うことがある

冒頭の社長の話に戻ると、その方は最終的にオペレーティングリースへの出資を決断し、当期の税負担を大幅に圧縮することができました。

決算2ヶ月前でも間に合ったのは、スキームの組成が比較的スピーディーだったこと、そして顧問税理士と早めに動けたことが大きかったです。

「利益が出た」とわかった時点で、すぐに動き出すのが鉄則です。決算月に入ってからでは選択肢が一気に狭まります。

今期、予想以上の利益が出そうな社長は、今すぐ顧問税理士にオペレーティングリースの検討を相談してみてください。まだ間に合うタイミングかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。