先日、ある社長からこんな相談を受けました。

「毎月10回以上は出張してるんですが、日当って出したほうがいいんですか?」

聞けば、旅費規程をまだ作っておらず、出張のたびに実費精算だけで済ませていたとのこと。これ、実は非常にもったいない話です。旅費規程さえ整えておけば、出張のたびに「非課税の収入」を社長自身がもらえるようになるからです。

日当とは何か、なぜトクなのか

旅費規程とは、出張時の交通費・宿泊費・日当などを会社として定めたルール文書です。この規程があれば、会社から社長や社員に「日当」を支払えるようになります。

日当のポイントはここです。受け取る側に所得税がかからない。 給与や賞与であれば、受け取った額に応じて所得税・住民税がかかります。しかし日当は所得税法上の「非課税」扱いになるため、手元にそのままの金額が残ります。

さらに、会社側では日当を経費(損金)に算入できます。つまり、支払った側は法人税を減らせて、受け取った側は課税されない。この二重のメリットが「日当節税」の本質です。

具体的にいくら得をするのか

数字で見ると、その効果がよくわかります。

仮に日当を1回3,000円に設定したとしましょう。出張が月4〜5回あれば、年間50回前後になりますよね。そうすると、年間15万円が非課税で手元に入ってきます。出張頻度が高い業種(コンサルや建設業など)では、日当を5,000円に設定して年間25万円を非課税で受け取っているケースも珍しくありません。

「たかが数万円」と思うかもしれませんが、これを給与で同じ金額を受け取ろうとするとどうなるか。所得税・住民税・社会保険料が合算されると、手取りベースでは3〜4割が消えてしまいます。25万円の給与増よりも、25万円の日当のほうが、受け取る金額はずっと多いのです。

給与を上げるより日当が有利な理由

社長の手取りを増やしたいとき、真っ先に思いつくのは「役員報酬を上げる」ことかもしれません。ただ、役員報酬を上げると社会保険料の負担も増えます。会社と個人の両方に跳ね返ってくるので、増やした分の実感がなかなか得られません。

一方、日当は社会保険料の算定対象外です。会社が払う社会保険料も増えず、社長が受け取る手取りもそのまま増える。給与という「重い器」ではなく、日当という「軽い器」でお金を受け取るイメージです。

この構造を知っているかどうかで、同じ売上・同じ利益でも、最終的な手取りに毎年数十万円の差がついてきます。

税務調査で否認されないための必須条件

「では今日から日当を出そう」と思ったとき、必ず守ってほしいことがあります。

まず、旅費規程を文書として整備すること。金額や適用条件が明文化されていなければ、日当の支払い根拠がありません。規程のない日当は、税務調査で「給与」と認定されるリスクがあります。

次に、出張の実態があること。日当は「出張に伴う実費補填・労苦への補償」という性質を持っています。実際に移動や業務が伴わない「架空出張」への日当支給は、税務調査で真っ先に問題にされます。出張記録や訪問先の記録を残しておくことが重要です。

また、日当の金額も「社会通念上、相当な範囲」でなければなりません。国税庁が公開している「民間企業の旅費支給実態調査」を参考に、業種・役職に見合った金額設定にしましょう。1日あたり役員で3,000〜10,000円程度が一般的な目安です。極端に高い日当は否認の対象になり得ます。

今期中に整備しておきたい理由

旅費規程は、作ってさえしまえばその日から適用できます。ただし「作った日」以前にさかのぼって日当を出すことはできないので、動き出しが早いほど有利です。

「どんな規程を作ればいいかわからない」という場合は、顧問税理士に相談するとひな型を提示してもらえることが多いです。自社の出張頻度や業種に合わせた金額設定もあわせて確認しておくと、より安心して運用できます。

出張のたびに手当が非課税でもらえる仕組みを、まだ作っていない社長は今期中に整備しておくことを強くおすすめします。毎年の積み重ねが、数年後に大きな差を生みます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。