先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。

「今期、予想外に利益が出すぎてしまって。税金で4000万円近く持っていかれそうなんですが、何かできることありませんか?」

決算2ヶ月前のことです。こういうタイミングで相談してくれるのはまだいいほうで、「もう決算が終わってしまった」という方も少なくありません。今回ご紹介する船舶オペレーティングリースは、そんな「利益が出すぎた決算期」に検討される節税スキームのひとつです。

航空機リースと同じ仕組みが、船にもある

オペレーティングリースといえば、航空機を使ったスキームが有名です。大型の旅客機に出資して、その減価償却費を損金に算入することで、初年度に大きな節税効果を得るというものです。

実は、まったく同じ仕組みが大型船舶にも存在しています。タンカーやコンテナ船といった海運系の船舶に出資し、その減価償却費を損金として計上する。これが船舶オペレーティングリースの基本的な構造です。

航空機リースに比べると知名度は低めですが、節税効果の大きさは引けを取りません。

4000万円出資すると、何が起きるか

具体的な数字で見てみましょう。

仮に4000万円を船舶オペレーティングリースに出資した場合、出資額の90〜100%程度が初年度の損金として計上できます。つまり最大3600万円から4000万円が、今期の利益から差し引かれるイメージです。

法人の実効税率をおよそ33%とすると、節税効果は約1200万円〜1300万円になります。「税金で2000万円払うくらいなら、4000万円出して1200万円浮かせたほうが合理的」と考える社長が多いのは、数字を見れば納得できると思います。

ただし、ここで終わりではありません。

出口のことまで考えて、初めてスキームが完成する

運用期間が終わると、船舶は売却されます。そのときに売却益が発生し、今度は益金として課税される側に回ります。節税したお金が、後から「戻ってくる」わけです。

これを聞いて「じゃあ結局プラスマイナスゼロじゃないか」と感じる方もいるかもしれませんが、そうではありません。

課税を「今」から「将来」に繰り延べることに意味があります。手元に残った資金を事業に再投資できますし、売却益が発生するタイミングに合わせて退職金の支給や別の節税スキームと組み合わせることで、出口の税負担を抑えることも十分可能です。重要なのは、出資する時点から出口戦略まで一緒に設計しておくことです。

飛びつく前に、3つのリスクを知っておく

節税効果が大きいぶん、注意点もしっかり理解しておく必要があります。

まず、運用期間が長いという点です。船舶リースの場合、8年〜12年程度の運用期間が一般的です。その間、資金は基本的に拘束されます。「やっぱり早めに資金が欲しくなった」となっても、中途解約は非常に困難であることを覚えておいてください。

次に、為替リスクです。船舶は国際取引に使われるため、リターンや売却益はドル建てで計算されることがほとんどです。円高が進んだ場合には、見込んでいた節税効果が目減りする可能性もあります。

そして最後に、これが一番大切なことですが「節税だけを目的に飛びつかない」という点です。あくまで事業の一環として出資するものであり、税メリットはその副産物です。税負担を減らしたい一心で、資金繰りや出口戦略を軽視した判断をすると、後々に大きなしわ寄せが来ます。

こんな社長に向いているスキーム

船舶オペレーティングリースが特に合うのは、「今期だけ突発的に利益が膨らんだ」「数年後に事業承継や廃業を予定している」「ある程度まとまった手元資金がある」といったケースです。

反対に、資金繰りがタイトな会社や、短期的な資金需要がある会社にはおすすめしません。節税の効果よりも、流動性が失われるデメリットのほうが大きくなってしまうからです。


今期の利益が想定以上に膨らんでいる社長は、決算が締まる前に一度、税理士と「出口まで含めた節税プラン」を話し合ってみてください。船舶リースに限らず、複数の手段を組み合わせることで、より柔軟な対応ができます。

「節税は、今期の税金を減らすことではなく、会社のキャッシュを最大化すること」——この視点を持って、焦らず、丁寧に判断していただければと思います。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。