先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「工場の屋根に太陽光パネルを載せようと思っているんですが、節税目的で使うのはもう無理ですよね?」
その社長、どうやら「太陽光の即時償却はとっくに終わった制度」だと思い込んでいたようです。でも実は、これは大きな誤解です。要件を正しく満たせば、2024年度においても即時償却は活用できます。今日はその話をしたいと思います。
「即時償却」が使えると、どれくらいトクなのか
即時償却とは、設備投資にかかった費用を、購入した年度に全額まとめて経費として計上できる仕組みです。通常、設備は法定耐用年数にわたって少しずつ減価償却していくのが原則。太陽光設備なら17年かけて償却するのが一般的です。
それを1年で全額落とせるわけですから、節税インパクトは相当なものになります。仮に5,000万円の太陽光設備を導入したとして、法人税率を約30%で計算すると、単純な税負担の先送り効果は1,500万円規模にのぼります。「先送り」とはいえ、このキャッシュが手元に残るかどうかは、資金繰りにとって大きな差です。
使える根拠は「中小企業経営強化税制」
今でも即時償却が狙える根拠となっているのが、中小企業経営強化税制です。この制度は、一定の要件を満たした設備投資を行う中小企業に対して、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下なら7%)の税額控除を選択適用できる制度です。
太陽光発電設備も、この制度の対象になり得ます。ただし「太陽光パネルを買えば自動的に使える」というわけではなく、いくつかのハードルがあります。
要件は3つのレイヤーで確認が必要
この制度を使うには、大きく分けて「設備の要件」「事業類型の要件」「認定の要件」という3つのレイヤーをクリアする必要があります。
まず設備の要件。機械装置であれば160万円以上、器具備品なら30万円以上など、種別ごとに最低取得価額が定められています。太陽光設備の場合、パネルや架台・パワーコンディショナーをどう分類するかによって扱いが変わることもあるため、事前の確認が欠かせません。
次に事業類型の要件。経営強化計画に記載する「事業類型」がいくつか存在しており、自社の投資内容がどの類型に該当するかを正確に判断する必要があります。太陽光発電の場合、「収益力強化設備(B類型)」として申請するケースが多いですが、この場合は経済産業局への事前確認書の取得が必要になります。
そして認定の要件。経営強化計画を策定し、主務大臣の認定を受けることが前提となります。この手続きには一定の時間がかかるため、「決算直前に思い立って申請する」というやり方はほぼ通用しません。
否認されると追徴課税のリスクも
「要件を満たしていると思っていたのに、後から否認された」というケースも実際には起きています。特に気をつけたいのは、認定前に設備を取得・稼働させてしまうパターン。手続きの順序を間違えると、せっかくの即時償却が丸ごと否定され、追徴課税の対象になることもあります。
節税のつもりが、むしろ追加コストになってしまう——これは笑えない話です。金額が大きいだけに、リスクも比例して大きくなります。
売電目的か自家消費かでも話が変わる
補足として触れておくと、太陽光設備の導入目的が「売電(FIT)」なのか「自家消費」なのかによって、制度の使い勝手や事業類型の当てはまり方が変わってくることもあります。
自家消費型であれば、本業のコスト削減に直結する設備投資として説明しやすい面があります。一方で売電目的の場合は、本業との関係性や事業計画の書き方に工夫が必要になることもあります。どちらが有利かは一概には言えず、個社の状況によって判断が異なります。
「太陽光の節税は終わった」はただの思い込み
冒頭の社長には、こう伝えました。「まだ諦めるのは早いですよ。ただ、段取りと要件確認を絶対に先にやってください」と。
太陽光への設備投資を検討している経営者の方は、「どうせ使えない」と判断する前に、一度税理士に相談してみることをおすすめします。手続きには時間がかかるため、導入の半年〜1年前から動き始めるくらいの余裕を持っておくのが理想です。大きな節税チャンスを、思い込みだけで見逃すのはもったいないですから。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。