先日、年商4億ほどの建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。

「ビットコインをけっこう持っているんですが、個人のままで大丈夫ですかね?」

その社長、売却益が出たときに初めて税率を調べて、思わず顔が青ざめたそうです。最大55%——。せっかく値上がりしたのに、半分以上が税金で消えてしまうかもしれない。これは決して他人事ではありません。


個人で持つと、なぜそんなに高いのか

個人が暗号資産を売却して得た利益は「雑所得」として扱われます。雑所得は給与所得などと合算して課税される「総合課税」の対象なので、所得が高い社長ほど税率が跳ね上がります。

所得税の最高税率は45%、そこに住民税10%が加わると、実質55%。1,000万円の売却益があれば、550万円が税金として消えていく計算です。これが個人保有の最大のリスクです。

一方、法人で暗号資産を保有して売却した場合、その利益は法人の課税所得に組み込まれます。中小企業の法人税実効税率はおおむね23〜34%程度。個人と比べれば、同じ利益でも税負担が大きく変わることがわかります。


「じゃあ全部法人に移せばいい」は少し待って

ここで気をつけてほしいのが、法人保有には個人にはない「時価評価課税」というルールがある点です。

2023年の税制改正以降、法人が保有する暗号資産のうち「短期売買目的」と判断されるものは、期末時点の含み益に対して課税されます。つまり、まだ売っていないのに税金が発生する可能性があるということです。

ただし、この時価評価課税には除外規定があります。自社で発行した暗号資産や、継続保有を目的として取得したもの(かつ市場で活発に取引されていないものなど)は対象外になるケースがあります。「短期売買目的かどうか」の判断が非常に重要で、取得時の目的設計と記録が命を握ります。

法人で保有するなら、最初から「なぜ保有するのか」「いつ売るつもりか」を明確にした上で、税理士と一緒に方針を決めておくべきです。


年商3億を超えるなら、持株会社スキームも視野に

事業が一定規模になってくると、持株会社(ホールディングス)を活用した保有スキームも選択肢に上がってきます。

簡単に言うと、事業会社とは別に資産管理専用の法人を設立し、そこで暗号資産を保有するという方法です。このスキームのメリットは、事業リスクと資産を切り離して管理できる点と、将来的な相続・事業承継を見据えた設計がしやすい点にあります。

もちろん、法人をひとつ増やすことで管理コストや税務申告の手間も増えます。「節税になるから」という理由だけで飛びつくのではなく、自社の規模感や将来設計に合っているかどうかを冷静に判断することが大切です。


出口戦略を先に決めることが最重要

ここまで読んでいただいてわかるように、暗号資産の税務は「どう売るか」より「どう持つか」の段階が肝心です。

個人か法人か。法人なら短期売買目的か長期保有か。売却タイミングと法人の決算期のズレをどう管理するか。こうした出口戦略を事前に設計しておくかどうかで、最終的に手元に残る金額が数百万円単位で変わってきます。

「含み益が出てから考えればいい」では遅すぎます。特に期末が近い法人は、時価評価の対象になるかどうかを今すぐ確認しておくべきです。

暗号資産をすでに個人で保有しているなら、今の保有状況を整理した上で、一度税理士に相談してみてください。法人への移し方、タイミング、保有目的の記録の残し方——これらをセットで相談することで、適切な設計ができます。動いてから後悔しないよう、動く前に専門家と話す。資産防衛の基本はここにあります。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。