先日、設立3期目を迎えたばかりの社長から「今年、税務署から連絡が来ました」と相談を受けました。会社を始めてまだ2年ちょっとなのに、なぜこのタイミングで調査なのか。実はこれ、偶然ではありません。
設立3期目というのは、税務署から見ると「そろそろ数字が読めるようになった会社」なんです。1期目・2期目はデータが少なく判断材料に乏しいのですが、3期目に入ると状況が大きく変わります。
消費税の「免税」が終わるタイミングと重なる
資本金1000万円未満で設立した会社の多くは、設立当初の2期間、消費税の納税義務が免除されます。ところが3期目に入ると、多くの会社が課税事業者に切り替わります。
課税事業者になると、当然ながら消費税の申告書を出すことになります。これまで見えていなかった売上・仕入の内訳が、税務署の目に触れるようになるわけです。法人税の申告書だけを見ていた税務署が、消費税の申告書という「もう一つの窓」を通して会社の取引を見られるようになる。これが調査対象として浮上しやすくなる一因と考えられます。
インボイス制度が始まってからは、取引先からの登録要請をきっかけに、想定より早く課税事業者を選択する会社も増えました。この場合も同様に、税務署が確認できる情報量が一気に増えることになります。
2期分の実績がそろい、数字の「比較」ができるようになる
税務調査は、単年度の数字だけを見ているわけではありません。前期・前々期との比較で、売上の伸び方や利益率の変化、勘定科目の動きに不自然な点がないかをチェックしています。
1期目だけでは比較のしようがありませんが、2期分の申告実績がそろう3期目になると、税務署側で「このパターンは同業他社と違う」「この科目だけ急に膨らんでいる」といった分析がしやすくなります。比較対象ができて初めて違和感が浮かび上がる、というわけです。
売上が順調に伸びている会社ほど、この時期の数字の変化は大きく映ります。成長そのものは喜ばしいことですが、急激な変化は税務署にとって「確認したい対象」に見えやすい、という点は知っておいて損はありません。
黒字が2期以上続くと、調査対象として意識されやすい
創業直後は赤字でも、3期目あたりで黒字化・黒字定着するケースは珍しくありません。事業として順調な証なのですが、税務署にとっては「継続的に納税余力のある会社」というシグナルにもなります。
赤字の会社を調査しても追徴できる税額は限られますが、黒字が定着している会社であれば、申告漏れが見つかった場合の追徴税額も相応の規模になりやすい。限られた調査リソースをどこに配分するかを考えたとき、黒字定着企業が優先されやすくなるのは、ある意味で自然な流れだと考えられます。
特に、粗利率が業界平均より高い、役員報酬の設定に大きな変動がある、といった要素が重なると、より注目されやすくなる傾向があるようです。
今からできる備え
調査そのものを避けることはできませんが、慌てないための準備はできます。
- 消費税の課税方式(原則課税・簡易課税)が自社に合っているか、切り替えのタイミングで見直す
- 売上・仕入の証憑(請求書・領収書・契約書)を月次できちんと整理しておく
- 役員報酬や交際費など、調査で必ず確認される科目の根拠資料を残しておく
これらは調査が来てから慌てて用意するものではなく、日々の経理の延長線上で整えておくべきものです。
黒字化や課税事業者への切り替えは、会社が順調に育っている証拠でもあります。ただ、それと同時に税務署から見える情報も増えるタイミングだということは、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。設立3期目を迎える前に、一度顧問税理士と一緒に、これまでの2期分の申告内容と証憑の整理状況を確認しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。