先日、ある社長からこんな相談を受けました。「税務調査なんて、そうそう来ないんですよね?」

聞けば、知人の税理士から「対象になるのは申告件数のうちだいたい3%くらい」と聞いたそうです。だから今回の申告も、多少グレーな処理をしても大丈夫だろう、と。

私はその場で、少し表情を変えてしまいました。

3%という数字の意味を取り違えていないか

結論から言うと、この3%という数字を「安心材料」として使うのは、かなり危険な発想です。

税務調査の対象になる確率が申告件数の3%程度というのは、統計上おおむね正しい数字です。ですが、この数字はランダムに抽選しているわけではありません。

税務署は法定調書や支払調書を通じて、調査に入る前からすでにかなりの情報を掴んでいるケースが多いのです。取引先からの支払調書、不動産の登記情報、金融機関からの情報。これらを突き合わせた結果、「怪しい申告」だけが選ばれて調査対象になっている側面があります。

つまり3%というのは「無作為に選ばれた3%」ではなく、「選ばれるべくして選ばれた3%」に近いということです。

仮装隠蔽が見つかったときの重さ

万が一、調査で仮装隠蔽が見つかった場合、重加算税として35%が科される可能性があります。

本来の税額に加えて、その35%が上乗せされるわけですから、インパクトはかなり大きいものになります。しかも重加算税がついた申告は、税務署の中で「要注意先」として記録が残ります。

一度でも痛い目に遭うと、その後何年にもわたって調査対象になりやすくなる。これは私が現場で何度も見てきたパターンです。

節税は「消える」のではなく「先送り」されている

もう一つ、社長方によく誤解されているのが「節税」の意味です。

世の中で語られる節税スキームの多くは、税金そのものがなくなっているわけではありません。今期の税負担を将来に先送りしているだけ、というものが実は大半です。

生命保険を使った節税、共済を使った節税、いずれも将来のどこかで課税が発生する設計になっています。「今期の税金がゼロになった」と喜んでいても、数年後にまとめて課税されるなら、本質的には資金繰りの調整に過ぎません。

この違いを理解しないまま節税商品を契約している社長は、想像以上に多い印象です。

その3%に入らない根拠、ありますか

冒頭の社長に、私はこう聞き返しました。「その3%に入らないという根拠は何かありますか」と。

売上規模、業種、前年からの利益の変動幅、取引先の数。これらの要素によって、調査対象に選ばれやすい申告というのは、ある程度パターン化されています。根拠なく「自分は大丈夫」と思い込んでいる状態が、実は一番リスクが高いのです。

特に、決算直前に慌てて経費を積み増したり、期ズレのある処理をそのままにしていたりする場合は要注意です。こうした処理は、税務署側から見ると比較的発見しやすい部類に入ります。

まだ今期の申告内容について、顧問税理士とじっくりすり合わせをしていないなら、決算が締まる前に一度、申告内容の棚卸しをしておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。