先日、経営者仲間の会に顔を出した社長から、こんな話を聞きました。
「先月、税務署から電話がかかってきて、その日は仕事が手につかなかった」
実際に電話を受け取った瞬間というのは、誰でも心臓が跳ねるものです。ですが、税務署からの電話そのものは、実はそこまで恐れるものではありません。今日はその理由と、電話が来た直後にすべきことをお話しします。
電話が来た時点では、まだ何も始まっていない
税務署のOBの方に話を聞くと、多くの調査は「事前通知」という形で始まるそうです。この電話で伝えられるのは、調査の対象となる税目と、対象となる期間だけです。
つまりこの時点では、まだ何かを追及されているわけでも、不正が疑われているわけでもありません。決算や確定申告を出している会社であれば、一定の周期で調査が回ってくるのはある意味自然なことです。
この段階でパニックになって変な動きをしてしまう方が、よほどリスクが高いというのが実情です。
電話を受けたら、やることは3つだけ
事前通知の電話を受けた後、社長がやるべきことは驚くほどシンプルです。
1つ目は、顧問税理士への連絡です。これは真っ先にやるべきことで、電話を切った直後に一報を入れるくらいのつもりでいて構いません。
2つ目は、調査官との日程調整です。多くの場合、税理士が窓口になって日程を詰めてくれますが、社長自身のスケジュールも早めに固めておく必要があります。
3つ目は、対象期間の資料整理です。伝えられた税目と期間に関する帳簿や証憑を、あるべき場所に揃えておく。これだけで、当日の準備としては十分です。
絶対にやってはいけないこと
ここで一番注意したいのが、慌てて書類を作り直したり、後から辻褄を合わせたりする行為です。
電話をもらった瞬間、「あの経費、領収書がなかったな」「あの取引、記録が曖昧だったな」と不安になる気持ちはよく分かります。ですが、ここで付け焼き刃の書類を新たに作成してしまうと、話は一気に悪い方向に転がります。
調査官は、書類の作成時期や整合性を見抜く目を持っています。後から作られたことが分かった書類は「仮装」と判断され、通常の追徴課税よりもはるかに重い重加算税の対象になりかねません。単なる記帳ミスであれば過少申告加算税で済むところが、意図的な隠蔽と見なされれば税率が跳ね上がってしまうのです。
ありのままを整理して臨むのが最善策
結局のところ、事前通知を受けてからの数週間でやるべきなのは、現状を「作り変える」ことではなく「整理する」ことに尽きます。
手元にある資料を過不足なく揃え、質問されたときにすぐ出せる状態にしておく。それだけで、調査当日の印象も、その後の展開も大きく変わってきます。
慌てて手を加えた形跡は、かえって調査官の目に留まりやすくなるものです。ありのままの状態で臨む方が、結果的に早く、穏便に調査が終わるケースが多いというのが、現場の実感のようです。
もし顧問税理士への連絡先や、日頃の資料整理の体制があいまいなままになっているなら、税務署からの電話を待たずに、今のうちに一度確認しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。