先日、個人で株式投資と暗号資産取引を両方やっている経営者の方から、こんな相談を受けました。「今年は含み益がかなり出ているんですが、このまま個人の口座で利益確定していいんでしょうか」と。

答えは、投資対象によって「イエス」にも「ノー」にもなります。実は同じ「投資の利益」でも、税金のかかり方は驚くほどバラバラなんです。

株式の売却益は一律20.315%

まず株式の売却益から見てみましょう。個人が上場株式を売って利益が出た場合、税率は申告分離課税で20.315%です。これは所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合わせた数字で、利益が1億円出ようが10億円出ようが、税率はずっと20.315%のまま変わりません。

一方、暗号資産(仮想通貨)はまったく違うルールが適用されます。個人が得た暗号資産の利益は「雑所得」として総合課税の対象になり、他の所得と合算されたうえで累進課税がかかります。所得が高い人ほど税率も上がっていき、住民税と合わせると最大で55%にも達します。

つまり、同じ「1000万円の利益」でも、株式なら約203万円の税金で済むのに、暗号資産だと最大で550万円近く持っていかれる可能性がある、ということです。この差はかなり大きいですよね。

法人なら800万円超でも23.2%で頭打ち

では法人ではどうなるのか。法人が保有する株式や暗号資産の利益は、事業所得と合算されて法人税がかかります。中小企業の場合、年800万円以下の部分は軽減税率15%、800万円を超えた部分でも23.2%が上限です。

ここがポイントです。個人の暗号資産のように「利益が増えるほど税率が上がり続ける」ことがなく、800万円を超えた瞬間から税率は23.2%で頭打ちになります。利益がどれだけ大きくなっても、それ以上税率が上がることはありません。

たとえば暗号資産で3000万円の利益が出たとします。個人なら住民税込みで最大55%、つまり1600万円以上が税金として消えていく計算になります。同じ利益を法人で得ていれば、実効税率は23.2%程度に収まり、税負担は700万円前後まで下げられる可能性があります。差額は900万円近くにもなります。

法人化すれば必ず得、というわけではない

ただし、ここで注意していただきたいことがあります。

法人化すれば必ず得をする、という単純な話ではありません。株式投資の場合、個人の20.315%という税率は、法人税率と比べてもすでにかなり低い水準にあります。利益規模によっては、あえて法人にせず個人のまま分離課税で済ませたほうが有利なケースもあります。

税率だけで判断するのではなく、「何に投資しているのか」「どれくらいの利益規模を見込んでいるのか」を踏まえたうえで、個人と法人のどちらで持つべきかを整理することが大切です。

特に暗号資産取引で継続的に大きな利益を出している経営者の方は、税率差のインパクトが大きいぶん、一度シミュレーションしてみる価値があります。

まだ投資資産の保有形態を見直したことがないなら、決算のタイミングで一度、顧問税理士に「この投資は法人と個人、どちらで持つのが得ですか」と聞いてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。