先日、都内に区分マンションを何室か持っている社長から、こんな相談を受けました。「生活費もまとめて経費に乗せてるけど、按分すれば普通は平気ですよね」と。
悪気があっての発言ではありません。多くの不動産オーナーが、同じような感覚で申告をしています。ところがこの「なんとなく按分」こそが、税務調査で最も狙われやすいポイントのひとつです。
「按分すれば大丈夫」は半分だけ正しい
自宅の一部を事業用に使っている場合、家賃や光熱費を按分して経費計上すること自体は、税務上まったく問題ありません。ここまでは社長の理解も間違っていませんでした。
問題は、その按分割合に根拠があるかどうかです。「なんとなく半分」「毎年同じ数字を使い回している」という状態は、税務署から見れば根拠のない経費と映ります。
実際に調査で按分割合の説明を求められると、答えに詰まる社長は少なくありません。感覚で決めた数字は、いざ聞かれたときに説明できないのです。
なぜ「仮装」と判断されると重加算税35%になるのか
通常、申告に誤りがあっただけなら、課されるのは過少申告加算税で税率は10〜15%程度です。ところが按分の根拠が示せず、実態以上に経費を積み増していたと判断されると、話は変わってきます。
税務署が「事実を仮装して所得を圧縮した」と認定すると、課されるのは重加算税35%。過少申告加算税の倍以上の重さです。
本人に脱税の意図がなくても、「説明できない数字」は「意図的に作った数字」と受け取られやすいという点が、この論点の怖さです。追徴税額そのものより、この仮装認定を後から覆すことのほうがはるかに難しいと言われています。
按分の本丸は「床面積」と「使用時間」の記録
では何をしておけば安心なのか。答えはシンプルで、按分の根拠を数字と記録で残しておくことです。
具体的には、床面積の実測値をもとにした事業使用割合の算出、そして仕事で使っている時間帯や日数の記録が有効です。たとえば「専有面積60平米のうち事務スペースが12平米」であれば按分率20%という説明が成り立ちます。
この記録は、税務調査が来てから慌てて作るものではありません。日頃から間取り図にメモを残す、簡単な使用実績表をつけておくといった程度で十分です。数字そのものの正確さより、「根拠を説明できる状態」を維持していることが評価されます。
今日からできること
不動産経費の按分は、割合の大小よりも「なぜその割合なのか」を説明できるかどうかで、税務署の見方が大きく変わります。
完璧な図面や台帳を用意する必要はありません。まずは今使っている按分率について、床面積か使用時間のどちらかで根拠を一枚メモにまとめておくところから始めてみてください。
まだ按分の根拠資料を作っていないなら、決算前の今のうちに整えておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。