先日、創業10年目になる社長からこんな相談を受けました。「今度うちに税務調査が入るらしいんですが、何を見られるんでしょうか」というものです。調査の連絡が来ると、多くの社長がまず身構えるのは売上除外や重加算税といった大きな話ですが、実際に調査官が最初に目を通すのは、もっと地味で決まった場所です。
結論から言うと、税務調査で狙われる勘定科目にはパターンがあります。現金商売の売上、役員まわりのお金の動き、交際費や外注費の内訳です。ここを事前に押さえておくだけで、当日の心証も、追徴のリスクも大きく変わってきます。
現金商売の売上と役員のお金の動きがまず見られる
元国税調査官に話を聞くと、調査でまず目が行くのは現金商売の売上と役員まわりのお金の動きだと言います。現金商売は通帳の記録だけでは裏が取れないため、レジの締め忘れや売上計上の遅れがないか、日々の入金と帳簿を突き合わせて確認されます。
もう一つが役員貸付金と役員借入金です。会社が社長に貸したお金、社長が会社に貸したお金が、期をまたいでどう動いているか。ここに不自然な増減があると、私的な流用や利益調整を疑われやすくなります。
加えて見られるのが、売上の計上時期です。決算月をまたいで納品や検収が行われた取引は、期ズレとして扱われるとその期の利益操作とみなされることがあります。3月決算の会社なら、3月末ギリギリの取引ほど注意が必要です。
交際費と外注費は「私的支出」が疑われやすい
次に見られやすいのが交際費と外注費です。交際費には損金算入の上限があるため、経費として計上したいという心理が働きやすく、税務署側もそれを知っています。家族との食事や個人的な買い物が紛れ込んでいないか、領収書の宛名や参加者、目的が細かくチェックされます。
外注費についても同様です。実態のない外注費が計上されていないか、あるいは実質的に従業員と変わらない働き方をしている相手への支払いを外注費として処理していないか、といった点が確認されます。後者は源泉徴収漏れや消費税の扱いにも波及するため、調査官にとって指摘しやすいポイントの一つです。
狙われる場所はある程度決まっています。だからこそ、日頃から区分を明確にしておくことが、いちばんの防御になります。
日頃からできる備えは「区分」と「証憑」
具体的には、交際費と会議費、福利厚生費の区分をあいまいにしないこと。誰と何のために使ったお金かを、領収書の裏や経費精算システムのメモ欄に一言残しておくだけで、後から説明できる材料になります。
役員貸付金や役員借入金についても、貸し借りが発生した理由と返済の見込みを記録しておくと安心です。特に役員貸付金は利息を取っていないと認定利息の問題も出てくるため、放置せずに定期的に整理しておくことをおすすめします。
外注費に関しては、契約書や業務委託の内容、成果物の納品記録を残しておくことが重要です。実態を示す資料がなければ、いくら「外注です」と主張しても調査官には伝わりません。
税務調査は、いつか必ず来るものだと考えておいたほうが気が楽です。狙われる場所が分かっているなら、日頃からそこだけでも整えておく。それだけで、調査当日の説明のしやすさはまったく違ってきます。
まだ交際費と会議費の区分があいまいなままなら、次の経費精算から少し意識してみるのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。