先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。工場の屋根に太陽光パネルを載せて電気代を抑えたいけれど、税金面でも何かメリットがあるなら教えてほしいと。
結論から言うと、一定の条件を満たす太陽光発電設備は、中小企業経営強化税制という制度を使うことで、購入した年に設備の全額を経費にできる「即時償却」か、購入価格の一部を税額から直接差し引ける「税額控除」のどちらかを選べます。
ただしこの制度、使い方の順番を間違えると「知らなかった」では済まされない落とし穴があります。
即時償却と税額控除、どちらがお得か
まず制度の中身を整理しておきましょう。中小企業経営強化税制は、生産性向上に資する設備投資を後押しするための優遇税制で、太陽光発電設備もその対象に含まれます。
即時償却を選べば、本来は減価償却で数年かけて経費化する設備投資額を、購入した事業年度に一括で損金算入できます。利益が大きく出そうな決算期に、大型の税負担を一気に軽くしたいときに向いています。
一方の税額控除は、取得価額の一定割合(資本金規模に応じて7%または10%)を法人税額から直接差し引く仕組みです。即時償却ほどのインパクトはありませんが、その分将来の減価償却費が通常どおり残るため、複数年にわたって安定した節税効果を得たい会社に向いています。
どちらが得かは、その期の利益水準や資金繰り、翌期以降の見通しによって変わります。単純に「即時償却の方が節税額が大きく見える」で選ぶと、翌期以降に経費として使えるはずだった償却費がなくなり、かえって数年後の税負担が重くなることもあります。
最大の落とし穴は「認定のタイミング」
ここが今回一番お伝えしたいポイントです。この制度を使うには、経営力向上計画という計画書を作成し、事前に国(経済産業局など)の認定を受けておく必要があります。
そして原則として、この認定は設備を取得する前に完了していなければなりません。太陽光パネルの契約や導入工事に着手してしまってから「後で申請すればいいだろう」と考えるのは危険です。
実際、認定前に設備を取得してしまい、後から救済を求めても認められなかったというケースは珍しくありません。制度上、例外的な救済ルートがまったくないわけではありませんが、要件は厳しく、確実性はかなり低いと考えておくべきです。
計画の認定には、税理士や経営革新等支援機関などによる事前確認が必要になる場合もあり、書類が整うまで一定の日数がかかります。太陽光発電設備の導入を決めたら、パネルの見積もりを取るのと並行して、まず認定の段取りに着手するくらいの感覚でちょうどよいでしょう。
対象設備の要件も事前に確認を
太陽光発電設備であれば何でも対象になるわけではない点にも注意が必要です。生産性向上要件など、設備の種類ごとに定められた要件を満たす証明書を取得できるかどうかも、事前に確認しておく必要があります。
自家消費型か売電型かによっても扱いが変わる場合があるため、導入目的を明確にしたうえで、対応可能な設備業者や税理士に早めに相談しておくと、認定手続きがスムーズに進みます。
まとめると
太陽光発電設備への投資で節税メリットを取りに行くなら、意思決定の順番が重要です。「設備を決める→見積もりを取る→契約する」という流れの中に、「経営力向上計画の認定を受ける」というステップを、契約前のどこかに必ず組み込んでおく必要があります。
即時償却か税額控除かの選択は、その期だけでなく数年先の利益計画まで見据えて判断したいところです。導入を検討し始めた段階で、一度顧問税理士に投資計画を共有しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。