先日、地方で製造業を営む社長からこんな相談を受けました。工場が水害の多いエリアにあり、そろそろ止水板や自家発電機を入れておきたいが、費用がかさむので二の足を踏んでいると。

結論から言うと、こうした防災・減災のための設備投資には、購入価格の一部を早期に経費化できる特別償却という優遇があります。中小企業防災・減災投資促進税制と呼ばれる制度で、対象設備なら取得価額の20%を通常の減価償却に上乗せして損金算入できます。

「防災投資はコストでしかない」と考えている社長は多いのですが、実は税制がその負担を後押ししてくれる仕組みがすでに用意されているのです。

対象になるのはどんな設備か

制度の対象は幅広く、自家発電機や排水ポンプ、止水板、防水シャッターといった、災害時の被害を直接減らす設備が中心です。地震による転倒・落下を防ぐための固定機器なども含まれることがあります。

工場の生産ラインを止めないための設備というより、「災害が起きても事業を継続できる状態」を作るための投資が対象だとイメージしておくとわかりやすいでしょう。

資本金や出資金が一定額以下の中小企業者であれば、法人・個人事業主を問わず利用できます。日頃から自然災害のリスクにさらされている業種ほど、恩恵は大きくなります。

最大の注意点は「順番」

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。この特別償却を使うには、事前に事業継続力強化計画という計画を作成し、国の認定を受けておく必要があります。

そして重要なのは、認定を受けてから設備を取得するという順番を守ることです。先に自家発電機を発注してしまい、あとから計画を申請しても、その設備は特別償却の対象にはなりません。

実務では、防災設備の見積もりを取り始めた段階で「そろそろ買おう」という空気になり、勢いで発注してしまうケースが少なくありません。ですが税制優遇を狙うなら、発注前に認定を取り終えているのが大前提だと覚えておいてください。

計画認定にかかる時間を逆算する

事業継続力強化計画の認定には、災害時の被害想定や対応体制、事前対策の内容などを計画書にまとめて申請し、審査を経る必要があります。書類の準備から認定まで、ある程度の日数を見込んでおいたほうが安全です。

「設備を決める→見積もりを取る→発注する」という通常の投資フローの中に、「計画を申請し認定を受ける」というステップを、発注より前のどこかに必ず組み込んでおく。これが唯一にして最大のポイントです。

認定を受けた計画は、税制優遇だけでなく、金融機関からの融資や信用保証枠の面でも有利に働くことがあります。防災投資と資金調達を同時に考えている会社には、なおさら使い勝手のいい制度です。

BCPと節税は同時に進められる

防災設備への投資は、これまで「もしものための備え」として、費用対効果が見えにくい支出だと捉えられがちでした。ですが特別償却という形で税負担が軽くなるとわかれば、投資の意思決定はしやすくなります。

自家発電機や止水板の導入を検討し始めたら、発注する前に一度、事業継続力強化計画の認定について顧問税理士や商工会議所に相談しておくことをおすすめします。順番さえ間違えなければ、災害への備えと節税を同時に手に入れられる制度です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。