先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「決算前に新しい加工機を買おうと思うんですが、節税になるって聞いたので急いで発注しました」と。
話を聞くと、機種も金額も決算対策として妥当なものでした。ただ、肝心の「どう節税になるのか」を理解しないまま契約していたのです。これは少しもったいない話です。
中小企業が機械を買うなら使いたい制度
中小企業が一定の機械や設備を購入したとき、税金を軽くする方法が2つ用意されています。中小企業投資促進税制と呼ばれる制度です。
1つ目は特別償却です。対象となる機械であれば、取得価額の30%を通常の減価償却に上乗せして償却できます。つまり、購入した年に経費として落とせる金額が一気に増えるということです。
2つ目は税額控除です。こちらは取得価額の7%を、法人税そのものから直接差し引くことができます。経費を増やすのではなく、税額を減らすアプローチです。
どちらを選ぶかは資本金の規模で変わる
ここで注意したいのは、どちらの制度を選べるかは会社の資本金規模によって決まるという点です。
資本金3,000万円以下の法人であれば、特別償却と税額控除のどちらかを自由に選べます。一方、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除は使えず特別償却のみが対象になります。
この線引きを知らずに「税額控除を使うつもりで機械を買ったら、実は対象外だった」というケースも見かけます。購入前に自社の資本金がどちらの区分にあたるかを確認しておくことが大切です。
特別償却と税額控除、実際の選び方
特別償却は、償却できる金額の合計自体は変わりません。将来経費になるはずだった分を、前倒しで多く計上できるだけです。つまり「今期の税金を軽くして、その分を将来に繰り延べる」効果を持ちます。
手元の資金を早めに厚くしたい、今期は利益が大きく出ている、というときに向いています。
一方の税額控除は、税金そのものを7%分減らす制度です。将来に繰り延べるのではなく、その場で税負担が軽くなります。今期も来期も安定して利益が出る見通しなら、税額控除の方が長い目で見て有利になることが多いです。
迷ったときは、決算までの利益見通しと翌期以降の業績予測を照らし合わせて判断するのがおすすめです。単年の節税効果だけでなく、数年単位でどちらが得かを考える視点が欠かせません。
対象設備の要件は事前確認が必須
もう一つ見落とされがちなのが、対象となる設備や取得価額に細かい要件がある点です。
機械装置であれば1台160万円以上といった金額基準があり、業種や用途によって対象から外れる設備もあります。中古設備は原則対象外になるなど、条件は毎年見直される可能性もあります。
「節税になると聞いたから買った」で終わらせず、契約前に税理士に対象設備かどうかを確認してもらうのが確実です。購入後に「実は対象外でした」となっては取り返しがつきません。
機械の入れ替えを検討しているなら、発注のタイミングで一度立ち止まり、特別償却と税額控除のどちらが自社に合うか、顧問税理士と一緒に試算してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。