決算前のある社長との雑談で、こんな話になりました。

「10万円を超える備品って、耐用年数どおりに何年もかけて償却しないといけないんだよね?」

実はそうとは限りません。取得価額が20万円未満の資産であれば、耐用年数に関係なく3年間で均等に経費化できる制度があります。今日はこの「一括償却資産」について、社長が誤解しがちなポイントを整理してみます。

10万円超・20万円未満は「一括償却資産」の対象

備品や工具を購入したとき、多くの社長がまず気にするのは「10万円を超えたら固定資産として何年もかけて償却するんだろう」ということです。

実際、原則はそのとおりで、耐用年数に応じて数年〜十数年かけて費用化していきます。パソコンなら4年、応接セットなら8年といった具合です。

ですが取得価額が20万円未満であれば、「一括償却資産」という制度を選ぶことができます。これを使うと、本来の耐用年数がどれだけ長くても関係なく、3年間で均等に損金算入できます。

たとえば18万円の複合機を買ったとします。本来の耐用年数が5年だったとしても、一括償却資産を選べば、6万円ずつ3年間で経費にできるということです。備品を買うたびに「これは何年で償却だっけ」と耐用年数表を調べる手間がなくなるのは、地味に大きなメリットです。

固定資産税(償却資産税)がかからないのも見逃せない

もうひとつ、社長が驚くポイントがあります。それは、一括償却資産として計上した資産には、償却資産税がかからないということです。

会社が保有する機械や備品には、毎年1月1日時点の資産状況に応じて固定資産税の一種である償却資産税が課税されます。通常の減価償却資産として計上していれば、この申告と納税の対象になります。

ところが一括償却資産は、この償却資産税の課税対象から外れます。備品をこまめに買い替える業種ほど、この差はじわじわ効いてきます。少額の備品を何十点も通常の固定資産として計上していると、それだけ償却資産税の申告対象も増えていくからです。

30万円未満の「即時償却」とは別の制度

ここで気をつけたいのが、青色申告の中小企業者等に認められている「少額減価償却資産の特例」との違いです。こちらは取得価額30万円未満の資産を、購入した年に全額を経費にできる制度で、年間合計300万円までという上限があります。

一括償却資産(20万円未満・3年均等)と、少額減価償却資産の特例(30万円未満・即時全額)は別枠の制度です。同じ資産に両方を適用することはできませんが、状況に応じて使い分けることができます。

たとえば今期は利益が大きく出ていて、できるだけ経費を前倒しで計上したいという年は即時償却を優先し、300万円の枠を使い切ったら、残りの20万円未満の資産は一括償却資産に回す、といった組み合わせ方もできます。逆に来期以降の利益をならしたいときは、あえて一括償却資産を選んで3年に分散させる、という判断もありえます。

まずは自社の資産台帳を見直すところから

備品や工具を購入するたびに、この資産は10万円未満で消耗品費なのか、20万円未満で一括償却資産にできるのか、30万円未満で即時償却の対象なのかを、経理の入り口で仕分けておくことが大切です。

決算になってからまとめて見直そうとすると、領収書を探すところから始めることになり、余計な手間がかかります。日々の記帳の段階で仕分けのルールを社内に浸透させておくと、決算前の負担がぐっと軽くなります。

まだ資産台帳や経費仕分けのルールを整備していないなら、次の備品購入のタイミングで一度、顧問税理士と一括償却資産の使い方を確認しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。