先日、ある製造業の社長からこんな話を聞きました。
「うちは償却資産の申告を、正直かなり適当にやっていた。気づいたら、もう使っていない古い設備の分まで、何年も税金を払い続けていたんです」
決算書の数字には毎年目を光らせていても、固定資産税の明細書までじっくり見る社長は、意外と多くありません。この税金、実は「払いすぎ」が起きやすい税金だということをご存じでしょうか。
なぜ固定資産税は過払いになりやすいのか
固定資産税のうち、土地や建物は自治体が評価額を計算してくれます。ところが機械や工具などの「償却資産」は、事業者自身が毎年1月末までに申告する仕組みになっています。
ここに落とし穴があります。
廃棄した設備を除却申告し忘れる。リース資産と自社所有資産を混同して二重に計上してしまう。過去の担当者が作った申告書をそのまま使い回し、実態と乖離していく。
こうした積み重ねで、実際にはもう存在しない資産や、価値がほぼゼロになった資産にまで課税され続けているケースが少なくないのです。しかも自治体側は「多く申告された分」を疑って指摘してくれるわけではありません。基本的に、申告された内容がそのまま課税の根拠になります。
縦覧制度という、あまり知られていない仕組み
こうした過払いに気づく手段のひとつが「縦覧制度」です。
毎年4月頃の一定期間、自社の固定資産の評価額と、同じ地域にある他の土地・家屋の評価額を比較できる制度が、多くの市区町村に用意されています。土地・家屋が中心の制度ではありますが、この機会に合わせて課税明細書全体を見直す社長は少なくありません。
「評価が明らかに高すぎないか」「もう手放した資産が明細に残っていないか」を確認する、年に一度のチェックポイントだと考えるとよいでしょう。
実務的には、縦覧を待たずとも、毎年送られてくる課税明細書と自社の固定資産台帳を突き合わせるだけでも、多くの誤りは見つかります。
気づいたら、さかのぼって戻ることもある
「気づいたときにはもう遅い」と思われがちですが、そうとも限りません。
評価のミスや二重計上といった過払いが自治体側に認められれば、過去の一定期間にさかのぼって還付を受けられるケースがあります。地方税には過誤納金の還付に関するルールが定められており、自治体によって運用の細部は異なりますが、数年分がまとめて戻ってくることも実際にあります。
ただし、これは「申告すれば自動的に戻る」性質のものではありません。まずは自社の側で、課税明細と資産の実態にズレがないかを丁寧に確認するところから始める必要があります。
まず手元の課税明細書を開いてみる
特にチェックしておきたいのは、次のような資産です。
- 数年前に廃棄・売却したはずの機械や設備
- リース契約が終了し、返却済みの什器類
- 移転前の旧事業所に紐づいたままの資産
心当たりがある場合は、顧問税理士に相談のうえ、課税明細書と固定資産台帳の突き合わせから着手してみてください。冒頭の社長も、この作業をきっかけに何年も気づかなかった過払いに気づくことになりました。
毎年当たり前のように払っている税金ほど、一度立ち止まって見直す価値があります。今期の決算作業に合わせて、固定資産税の明細も一度確認してみてはいかがでしょうか。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。